第116話『夜の魔術師』
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らを見てから避けるのは至難の業。だから終夜は感覚で飛ぶように避けて、何とか射線から外れようとする。が、
「はい、そこぉ! "流星パンチ"!」
「ぐっ!」
避けた先には月の拳が待っており、辛うじてガードは間に合ったが、その衝撃で終夜は後ろに大きくよろけてしまう。
そんな無防備な彼に、月はもう一度拳を振り上げ──
「"黒雷鳴"!!」
だが、終夜と月の間に突如として落ちた雷によって追撃が拒まれる。
その隙に終夜は後ろへと飛び退き、体勢を整えた。
「むぅ、惜しいなぁ」
「あの〜、召喚魔術使う人が前線に出てこないで欲しいんですけど」
「え? だって別にあたしはそれが本職じゃないし」
「知ってますよ。だから先輩は手強いんです」
召喚魔術を用いて、強制的に自分と召喚獣による多対一の数的有利対面に持ち込める。それが星野 月が強い理由の1つだ。他にも理由があるって事実を受け入れたくはないが。
「やっぱり召喚されたやつから倒さないと厄介だな」
数的不利の中でまともに戦って勝てる相手ではない。正直なところ、終夜の実力ではタイマン張ってワンチャン狙いが関の山なのだ。
だから邪魔な奴らはとっとと片付けたいのだが、生憎そんな隙がない。召喚獣を狙えば月に防がれ、かといって月自身に攻撃を通すのも至難の業。どうにかして、彼女の気を召喚獣から逸らすしかない。
「だったら……"天地鳴動・暗黒雷電波"!」
「え、何その技!?」
終夜は腰を落とし、両手を大きく広げて構える。いかにもな大技の構え。月にとっては見たこともない技であり、当然警戒の対象になる。そして彼女は来る一撃に備え、自身の守りを固めるだろう。
──そこがチャンスだ。
「……と見せかけて、ただの"冥雷砲"!」
「あ!」
月の意識が自衛に向いた瞬間、終夜は広げていた手を正面に向ける。それはまさしく指鉄砲の構えであり、器用にも両方の指から放たれた黒雷は見事、召喚獣達を撃ち抜いた。
「もう! 終夜のくせに生意気!」
「へへっ、騙される方が悪いんですよ!」
「この、だったら"ギョギョちゃん"!」
「うわぉ!?」
召喚獣達が消えても、ぷんすかと怒る月は間髪入れずに次の召喚を始める。そして現れたのは鰯のような魚の大群であり、それらは生み出されるや否や、終夜の方へと突っ込んできた。
「これ魚の群れっていうか、もはや機関銃じゃねぇか! "夜の帳"!」
十や百どころではない。数千、数万に至るほどの魚群。一体どの個体が"ギョギョちゃん"なのかとツッコみたくなるところだが、そんな余裕はなかった。
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