第2部
エジンベア
渇きの壺
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でお客さんが入らなかったのかも……」
「気にしないでください。うちの店はいつもこんなものなんです。この国の人たちには少しカジュアル過ぎるみたいで」
「えっ!? こんなに素敵なお店なのに!?」
でも確かに、他のお店は格調高いと言うか、貴族の人が御用達にするようなお店ばかり並んでいた。私みたいな庶民にはマギーのお店はおしゃれで洗練されたイメージしかないが、この国の人たちにとっては考え方が違うのかもしれない。
「おい。無駄話はいいから、早く行くぞ」
「行くってどこへ?」
だが、私の問いにユウリは無言を貫いたまま、再び店を出ようとする。私は慌ててマギーに向き直ると、
「あ、あの、今日はありがとう! また今度聞かせてね」
「はい、私も楽しみにしてます!」
そう忙しなく別れを告げ、マギーのお店をあとにしたのだった。
店の外に出てからユウリに連れてこられたのは、少し離れたところにある小さな公園だった。公園と言ってもそこかしこに美しい花々が植えられており、まるで手入れの行き届いたお城の庭園のようだった。
その一角にあるベンチに座った私は、すぐに隣に座ったユウリの表情を盗み見る。確か王様に最後の鍵のことを聞きに行ったはずだったんだけど……。
「何かあったの?」
わざわざ場所を変えておきながらなかなか話を切り出そうとしないのでこちらから尋ねてみたが、何故かユウリは浮かない顔をしている。すると何かを決意したのか、ユウリはこちらを一瞥すると、ようやく話し出した。
「王様に最後の鍵があるかどうかを尋ねたが、持っていないと言われた」
「あぁ……、それなら仕方ないね」
さすがにそんな簡単には見つからないだろう。そう頷いていると、
「だが、最後の鍵を手に入れるのに必要なアイテムがこの国の城の地下にあるらしい」
「えっ!?」
「『渇きの壺』といって、本来は西の大陸のある民族が持っていた宝らしい。だが、その情報を入手した何代か前のエジンベア王が、その宝を手に入れようと、侵略という形で強引に手に入れたそうだ」
「侵略……」
相手の合意も得ず、一方的に制圧し、彼らが大切にしてきたものを奪った。当時のエジンベアは、そんな横行も許されたのだろうか。
その後のユウリの話によると、結局壺の方は手に入れたものの最後の鍵を入手するまでには至らず、他国から奪った渇きの壺だけが城の地下に今でも眠っているという。
「え、じゃあ結局その『渇きの壺』っていうのは王様からもらえたの?」
ユウリは苦々しげに首を振った。
「いや、この国の歴史を風化させないためにこれからも保管したいと言われた。そんな下らないことのために手元に残すくらいなら、とっとと手放せばいいのに」
そう言い切ると、大きく息を吐くユウリ。
「それじゃあ、どうするの? せっ
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