第2部
エジンベア
渇きの壺
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いるのだ。
すると、先ほどから私の視線が気になるのか、彼女は急に話を中断してしまった。
「ごめん、集中出来なかった?」
「いえ、あの、こんな風に私の話を聞いてくれる人なんて、身内以外で初めてだったんで嬉しくて……」
「そうなの? でも聞いててとっても面白いよ」
そう言うとマギーは淋しそうに首を横に振った。
「そんな風に言ってくださるの、ミオさんだけですよ。勇者物語ばかり読む年頃の女なんて私くらいですし。つい最近も、いつもお店に来る人に『変わった子だね』って言われてるんですよ」
「え!?」
こんな可愛くて優しい子を変わり者呼ばわりするとは、なんて失礼な人なんだろう。
「だから、ミオさんみたいに私のことを受け入れてくれる人がいるって知って、嬉しいんです」
そう言って顔を綻ばせるマギーは、本当に嬉しそうだ。
「ねえマギー。あなたとっても美人なんだから、眼鏡を外してみたら? そしたらきっと、誰も変わってるなんて言わないと思うけど」
私が正直な感想を述べると、マギーは思いきり首を横に振った。
「何言ってるんですか、ミオさん。私なんか全然美人じゃないですよ。それに、メガネがなかったら何も見えなくなっちゃいますし」
「え、そんなに目悪いの?」
「はい。裸眼だと自分の顔が殆ど見えなくて。きっと夜遅くまで本を読んでるからだと思うんですけど、どうしても読みたくって……。だから外に出るときはいつもこれをつけてるんです」
そっか、じゃあ自分の素顔がどれだけ美人なのかわからないんだ。
「うーん……。ホントに美人なのに、なんか勿体ないなあ」
「ありがとうございます。でも私は、容姿よりも本の話をする方が好きなので、今のままで充分なんですよ」
本人がそう言ってしまっては、これ以上周りがとやかく言う必要はない。
「そっか。ならさっきの続き、聞かせてよ。私も勇者物語は昔からよく聞かされてたし、何より今は主人公と一緒に旅してるようなものだしね。何か参考になるといいかな」
「はい、もちろん!」
私の要望に、マギーは笑顔で返事をした。
その後、私たちはユウリが戻ってくるまで、勇者物語についてお互い夢中になって話し込んだ。趣味が他の人と違うだけで、マギーは普通の女の子と変わらない。そんなマギーと話している時間はとても楽しかった。
「随分暇そうだな」
その声にハッとして、私は後ろを振り返る。店の扉が開く音にも気づかず話し込んでいたのか、いつの間にかユウリがカウンター越しに私たちの向かいに立っていた。
「ユウリ! いつ戻ったの!?」
「つい今しがただ。店の外にまでお前らの話し声が聞こえてたぞ」
何と言うことだ。妙にお客さんの入りが少ないなと思ったら、私たちの話し声のせいで入りづらかったのかもしれない。
「ごめんマギー、私のせい
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