第二部 1978年
ミンスクへ
ベルリン その4
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ねる
「お前さん、今頃来て何さ?
何か仕出かしたのか」
笑う彼が、返す
「あと少し待ってくれ」
不思議な事を言う彼を無視して、再び少佐の方を向いた
少佐達は、兵からの帰宅を促す言葉や罵声を浴びて、委縮しているようにも見える
車に乗ろうにも、鍵は奪われ、車輪には三角形の車止めが前後から設置され動かせない状態
基地の敷地外から遠巻きに見ている秘密情報員も、双眼鏡で覘くだけで動く気配が無い
何処からかカメラを持ち込んだ兵士が、情報員の写真を撮り始めている
30分もしないうちに、軍用トラックが二台ほど乗り付け、最寄りの部隊から軍巡邏員(憲兵)が来た
ヘルメットに白線が引かれ、黄色い菱形文様の中にKD(Kommandanten Dienst)の文字が大書されている
事情聴取と言う事で、敷地内の倉庫に彼らの身柄を運んだ
車を、手で押し掛けして敷地内の駐車場に移動させようとする
青白い煙が上がり、2ストロークエンジンから騒音が響く
ボンネットから、煙が立ち込め、油を焦がした様な臭いが広がる
エンジンを掛けようとして、壊れた様であった
何者かが、角砂糖でも入れたのであろうか……
それとも粗悪な東ドイツ製であった為か
やむなく彼等は、整備兵に車を預けることにした
事務所に入るなり、少佐は腰かけた
尊大な態度で、彼等を見回す
「私がここに来た理由が分かるかね、同志中尉」
彼は、椅子で足を組む男を見つめた
「アイリスの事か。それならば話には乗らないぞ」
「待ちたまえ、私はまだ何も説明して居ないぞ……
君は焦る癖がある。
人の話を聞き給え。
君とヤウク少尉だが、一日ほど身柄を借りたいのだよ。
何、党の為に少しばかり働いてもらうだけだがね……」
困惑する青年将校たちをしり目に、曹長が切り出した
「困りますな。
飽く迄人民軍は国家組織です。
現実はともかく、建前としては、労働者と農民、人民の為の軍隊です。
あなた方の部署へ私的に貸し出しをする等、行動規範に反する事です」
彼は、背凭れに寄り掛かる少佐を直視する
腕を組み、歩幅を広げながら室内を歩く
「同志少佐にはもう少し、軍について学ばれてから此処へいらっしゃる様にして下さい。
我々も今回のような訪問には非常に困惑して居りますゆえ」
合成皮革の長靴が擦れる音がする
少佐は身を起こして立ち上がった
「まあ、良い。
明日の君達の態度、楽しみに待っているぞ」
その様に言い放つと、彼等は、基地を後にして行ったのだ
「ユルゲン、起きろよ」
彼は、ヤウクの声で目を覚ました
暫し考え込んでいる間に転寝をしてしまったようだ
慌てて、第一ボタンを閉め、襟ホックを掛ける
「まだ大丈夫だ」
左側の少将が答えた
将官を前にして眠るとは……
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