第十八章 明木史奈救出作戦
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顔、上げて、くれんかの、アサキちゃん」
どんな態度を取ればいいのか、治奈は、すっかり混乱してしまっている。
だが、二秒、三秒、進むにつれた、僅かではあるが、すっきりした顔になっていた。
「アサキちゃんがそういってくれたことで、少し気持ちが楽になった。ありがとう」
微笑み、アサキの手を握った。
「確かにさ、至垂の本来の目的はアサキにあると思うぜ。でも別に、アサキが悪いわけじゃねえし。気にすんなよ。つうか真面目なんだよなあ、お前たちはさあ」
カズミは苦笑しながら、二人の肩をぽんと叩いた。
と、すぐに苦々しい真顔になって、
「ただ一つ、間違いなくいえることは、あの野郎はあたしのダチの家族にまで手を出しやがったってことだ。この落とし前は、きっちりつけてもらう」
「いや、そこはやはり警察に相談すべきじゃろ」
ぶれない治奈であるが、カズミの反応は、先ほどと異なるものだった。
ぷっ。
と吹き出したのである。
「治奈、お前……まあそうなるのも当然かも知れないけど、嘘がさ、極限にまで下手クソになってるよ」
「嘘なぞついとらん。フミが大切じゃからこそ、慎重に行動せにゃいけん」
「メンシュヴェルトもリヒトも、国家の作った非合法組織。トップが堂々こんなことしてるのに、警察もクソもない。……治奈、お前さあ……一人で、あいつんとこに乗り込もうと思っているだろ?」
いわれて、治奈は無言であった。
しばらくして、小さく、はっきりと頷いた。
「フミは絶対に助けたい。絶対に。ほじゃけえ、関係のないみんなを巻き込みたくない。最初は混乱して、どうすりゃええのか分からなかったけど」
「治奈……」
視線をそらしがちな治奈を、見つめているカズミ。
カズミが、ゆっくりと手を上げた。
上げたと見えたと思ったら、
パン、
と大きな音が鳴っいた。
カズミが、頬を張ったのだ。
思い切り。
渾身の力を込めたかの打擲に、自分の頬に手を当てて、しばしあ然とする治奈。
横で見ているアサキも、自分が打たれたわけでもないのに、同じ顔になっている。
ぼろり。
治奈の目から、これまでにない大粒の涙がこぼれた。
と、カズミが、震える親友の身体を抱き締めていた。
背中に腕を回して、強く抱き締めていた。
強く、そして優しく。
「ごめん、殴って。……水くさいよ。……仲間だろ?」
吐息のような、カズミの声。
治奈の、大粒の涙が、さらにぼろり、ぼとり。
く、と呻くと、大きな泣き声を上げ始めた。
「な、仲間じゃからっ……カズミちゃんも、アサキ、ちゃんもっ、た、大切な、仲間、じゃからっ、ぼじゃから、うち……」
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