第十八章 明木史奈救出作戦
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こと?」
「どうもこうもねえよ。至垂のクソ野郎、もうとっくに開き直っているから、ストレートな手段に出てきたんだよ」
「わたしたちを誘い出すために、誘拐したってこと?」
「そうだよ。ふざけやがって。準備が整ったら、さっそく乗り込もうぜ」
「いや、それは無茶だよ。相手は、なにを仕掛けているのか分からないんだよ」
ゆるせないのは、わたしだって同じ。
わたしだって、血が逆流するような気持ちだ。
怒りと悲しみ、焦りに頭がぐちゃぐちゃ。
一刻も早く、フミちゃんを助け出したい。
だけど、勇気と無謀を履き違えては、為せるものも為せない。
誘拐、ということは、すぐに殺してしまうとか、そういうことはないはずだ。
須黒先生の作業が終わったら、対策を練って、それからだ。
我々は仲間だが、他には誰を信じてよいのか分からない。
だから、わたしたちだけでやるしかない。
だからこそ、考えなしに動いてはいけない。
と、怒りと焦りをぐっと堪え、努めて冷静でいようとするアサキであるが、
「はあ? 無茶は承知の上だよ! この赤毛! フミちゃんの命がかかってんだぞ。な、治奈」
むしろ、カズミの気持ちを、逆なでしてしまったようであった。
だが、誰が思っただろうか。
意見振られた治奈が、
誰よりも狼狽し、なりふり構わず妹を取り戻したいと願っているはずの、治奈が、
「これは、誘拐事件なんじゃ。警察に、相談しよう」
元気なく、涙目で、このような言動に出るなどとは。
「おいおい、治奈までかよ! お前の妹だろ! 誘拐じゃろから警察じゃけえとか、そんな普通の手段が通じる相手じゃねえこと、分かってんだろ?」
「ほじゃけど! ほじゃけど……みんなに迷惑は」
「迷惑かけているのはわたしだよ!」
アサキは、両の拳をぎゅっと握り、大声を張り上げた。
ぽかんとした顔になっているカズミと治奈に、アサキは、一転小さな声になって、ぼそり。
「たぶんあの人の狙いは、わたしだ。……わたしに、そんな力なんかないというのに」
至垂の目的は、超ヴァイスタを作り上げ、「絶対世界」への扉を開くこと。
超ヴァイスタ候補として、ターゲットにされているのは、現在のところアサキだ。
彼のすべての行動は、そのための布石なのだ。
布石、といっても彼は柔軟に、その時々のことを巧みに利用しているだけであるが。
「だから、フミちゃんが連れ去られたのは、どちらかといえばわたしのせいなんだ。ごめん、治奈ちゃん」
アサキは深く頭を下げ、床に擦り付けた。
先ほどの治奈に、勝るとも劣らないほどに。
「あ、いや……か、
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