第十八章 明木史奈救出作戦
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つもの言葉であるというのに、久し振りに聞いたせいか、こんな状況下で聞いたせいか。
なんだか、なんでも願いがかなう、魔法の言葉であった。
治奈も、カズミも、きっと同様であったのだろう。
「はい!」
三人は、元気よく、強く、返事をしたのである。
「絶対に、生きて帰れ? ははっ、少なくともわたしは大丈夫でえす。唯一の三年生ですし、天二中のリーダーですからねえ。といっても、リーダーの自覚なんかないけどお」
自慢なのか自虐なのか、万延子、ふふふんと澄ました顔だ。
「お前さあ、死亡フラグおっ立ててんじゃねえよ。バカか」
カズミに突っ込まれて、万延子はぎゃーっと悲鳴を上げた。
「おーっ、そ、そ、そういうこというのかあキミはあ! キバちゃん、キミはあ!」
おろおろうろたえる万延子の様子に、カズミはぷっと吹き出した。
「……事情を知って、雰囲気をなごませようとしてくれてんだろ? ありがとな。こいつの妹を人質に取られて、あたしたち実はかなり動揺しててさ。さすが、第二中のリーダーだよ。……よろしく、頼むぜ」
カズミはゆっくりと、真っ直ぐと、右腕を伸ばした。
苦笑しながら万延子は同じように腕を伸ばし、
二人は拳同士を、こつんとぶつけ合わせた。
どちらからともなく、にっと不敵な笑みを浮かべた。
遠くから、ライトの灯り。
灯りはだんだん強くなり、一台の、黒い乗用車が通り過ぎた。
どこででも見掛ける、ごく普通の乗用車であるが、アサキは、なんとなく視線を追わせ、去り去る車体をそのまま見続けていた。
「よく気付いたね、令堂さん」
祥子が、そんなアサキの様子をじっと見ていた。
「やっぱり、リヒトの?」
「そう。背広組の、誰かかな。……魔法使いではない者も、そこら辺ウジャウジャいるんだよ。別に珍しいものじゃないんだ」
「へえ」
「リヒトの背広なんか関係ねえよ! これからトップを、至垂をブッ潰すんだからな!」
カズミが言葉吐き捨てながら、去り行く自動車を見て、拳で殴るような仕草を取った。
アサキは不安げな表情で、その去り行く自動車を、まだ見つめていた。
本能が、嫌な予感を覚えていたのだ。
だがそれはあくまで予感に過ぎず。史奈が人質に取られているという、はっきり認識している緊急事態に、気のせいだと思い込むことにしたのであるが。
カズミの言葉、実は、関係なくなどは、なかった。
アサキの直感こそが、正しかったのである。
この時、この自動車を追わなかったことにより、アサキは、地獄の猛火に焼かれた方がましというほどの苦しみを味わうことになる。
だが、それはまだ先の話である。
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