第二章
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「拙僧の願いが適えられぬなら比叡山に怨みを晴らすのみ」
「しかしそれはです」
「相手が相手ですじ」
「流石に戒壇までは」
「他のことなら何でもといいますし」
「諦めるべきです」
「出来ぬ、戒壇こそ我が願い」
園城寺にもそれが授かることがというのだ。
「それが適わぬなら拙僧は喜んで怨霊となろうぞ」
「これはいかん」
この話を聞かれた帝は苦い顔で言われた。
「まことに申せ、戒壇以外はまことにな」
「よいですな」
「それ以外は」
「そう頼豪にあらためて告げますな」
「朕は鴨川と賽の目と僧兵以外は全てどうにもなる」
その僧兵こそが延暦寺である、延暦寺は極めて強い僧兵を多く擁していて何かあると都に来ていたのだ。
「だからな」
「戒壇だけは出来ぬ」
「だからですな」
「頼豪にもですな」
「その様に伝えよ」
こう言われて位でも経典でも荘園でもその他のことでもと言われた、しかしやはり戒壇だけはであり。
遂に頼豪は髪も爪も切らず百日に渡って比叡山を呪い続け死んだ。帝はその話を聞かれかず夜の空に妖星が出たとの陰陽師の話に尚更苦い顔になられた。
「これはな」
「何かありますな」
「頼豪が怨霊となり」
「そうしてですな」
「恐ろしいことが起こる」
そうなると言われた、そして実際にだった。
比叡山に恐ろしい数の鼠達が現れた、その鼠達はというと。
「石の身体に鉄の歯ではないか」
「何だこの鼠は」
「しかも異様に数が多いぞ」
「何万いるのだ」
異様な身体に恐ろしいまでの数だった、そしてだった。
山中を駆け回り寺の仏像や仏具、経典等を噛み散らかして壊してだった。
寺の中を滅茶苦茶にしていった、ここで比叡山の者達はわかった。
「これは頼豪殿だ」
「頼豪殿に違いない」
「今この比叡山に何かするとなると」
「あの御仁しかおられぬ」
「この世を去られたが」
「怨霊となられたはまことか」
寺中を暴れ回る鼠達を見て口々に言った、特に。
ひときわ大きな鼠、牛程のそれを見てある僧が言った。
「あの目間違いない」
「頼豪殿ですか」
「御坊は頼豪殿と度々お会いされていますが」
「間違いありませぬか」
「はい、間違いなく頼豪殿です」
その僧は他の僧達に真剣な顔で述べた。
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