第五章
[8]前話
「天職かと」
「そこまでか」
「はい」
まさにというのだ。
「ですからこれからも」
「幼稚園にいて欲しいか」
「子供達もお母さんかお姉さんの様に懐いていて」
それでというのだ。
「とてもです」
「そうか、それは何よりだ」
「はい、ですが」
それでもとだ、園長は理事長に話した。
「シスターは高等部では」
「あの外見だからな」
理事長は率直に答えた。
「だからな」
「それで、ですか」
「誰もが彼女を見てな」
「他のことはですね」
「目に入らなくなっていてだ」
そうなっていてというのだ。
「もうだ」
「問題になっていましたか」
「そうだった」
このことをそのまま話した。
「それが問題だった」
「そうでしたか、十代ですから」
「そこがな」
「やはり問題になりますね」
「だが子供だとな」
「十代のそうした感情はないですから」
子供故にというのだ。
「ですから」
「それでだな」
「そうしたことはありませんね」
「そうだ、だからな」
それでというのだ。
「幼稚園に行ってもらって正解だったな」
「そうですね、本当に」
「ではこれからもな」
「シスターはですね」
「幼稚園にいてもらおう、彼女も不満はないな」
「はい、快く生き生きとです」
そうした感じでというのだ。
「働いてくれています」
「ならだ」
それならというのだ。
「これからもな」
「シスターにはですね」
「幼稚園で働いてもらおう」
「そうしてもらいますか」
「高等部に来てもらったが」
キリスト教の教義の素養と教師としての資質を見てだ。
「だがな」
「それでもですね」
「それ以外のことで問題だった」
外見特に胸のことでというのだ。
「そこまでは考えていなかった」
「まさかですね」
「全くだ、適材適所というが」
「こうしたこともですね」
「そうだな、気をすつけないとな」
どうしてもというのだ。
「かえってよくない」
「こうしたことも」
「そのことがよくわかった」
こう言うのだった、そうしてだった。
ミカエラは日本にいる間神学博士として論文を書き発表することはあった、だが教師としてはずっと保育園にいた。
アメリカで彼女を知る者達は何故高度な教義を教えるべき高等部そして大学ではないかといぶかしんだ、だが理事長の話を聞いて頷いた。そうした事情があるのならと。人間それも若いとどうしてもそうしたことで頭が一杯であることがわかっているからこそ。
南蛮黒船 完
2021・6・13
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