第四章
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「そうしよか」
「私物で使えるものやないさかいですね」
「とてもな、所詮うちは茶道の家でしかない」
「王室ではないので」
「あの方々はまたちゃうやろ」
「我が国の皇室の方々も」
「そうした方々の使われるもんで」
それでというのだ。
「そやからな」
「お返ししますか」
「財産にするのもな。元々あちらさんのもんやし」
これもしないというのだ。
「そうするで」
「わかりました」
亜久里だけでなく他の家族も頷いた、こうしてだった。
そのセットは領事館に事情を話して引き渡した、すると領事館の方でも驚いたが元々王室のものならと頷いてだった。
セットを受け取った、そしてだった。
この件は終わった、だが。
彗士は全てが終わってから亜久里に茶室で茶道の稽古をしながら言った。
「ティーカップばかりは驚いたわ」
「そうですね、私もです」
亜久里もこう返した。
「まさかです」
「こんなことになるとは」
「千円のものが百万円で」
「しかもビクトリア女王の由縁のもの」
「こうしたことがあるとは」
「お前の目利きは凄いな、しかしカップのことはな」
これはというのだ。
「飛び抜けてたわ」
「そうですね」
「ほんまにな、そやけどええものを見る目があるのはな」
これはとだ、妹に兄として話した。
「ええことや、これからもその目を備えていくことや」
「そうしてですね」
「ええ茶器を見付けるんや、僕もお前を見て備えていくわ」
その見る目をというのだ。
「茶器に。それにな」
「それにといいますと」
「人を見る目もな」
妹に茶を淹れつつ笑って話した。
「そちらもな」
「備えるべきですか」
「ええ茶器悪い茶器がある様にな」
それと同じでというのだ。
「世の中ええ人と悪い人もおる」
「それで人のこともですね」
「見極めんとな」
「あきませんか」
「そやからな、そこはどっちが上かわからんけど」
それでもとだ、妹に言った。
「備えていこな」
「そうですね、では」
「茶器も人もな」
「見ていきましょう」
亜久里は兄に微笑んで応えた、そうしてだった。
二人で稽古をしつつ飲んでいった、この時使っている茶器はどれも亜久里が見付けたものだったがどれも見栄えだけでなく非常に使い勝手がいいものだった。
茶器茶器娘 完
2021・6・15
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