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俺様勇者と武闘家日記
第2部
エジンベア
謎の少女
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か? いくら見た目が勇者物語に出てくる主人公に似てたとしても、初対面ですよね?」
 私は疑問に思っていたことをマギーさんに尋ねた。彼女はユウリから目を離すと、何を今さら、とでも言うように私に向き直った。
「え!? ユウリさんは勇者様ではないのですか!?」
「あ、いや、勇者は勇者なんですけど、その……、格好が似てるからと言って本物の勇者とは限らないじゃないですか」
「でも今、勇者だと言いましたよね? それに、ここまで本とそっくりな人が、勇者様じゃないわけがないじゃないですか」
「えーと……」
「勇者様をお助けするのは当然の義務です。だから私は行動に移しただけです」
「……そ、そうだったんですね。おかげで助かりました」
 マギーさんの言い分に、私はこれ以上追求することをやめた。
「現実と虚構の区別がつかない女なんだな」
 私しか聞こえない声で、身も蓋もないことをぼそりと呟くユウリ。
 私は話題を変えようと、カウンターの隅にこっそりとおいてある、先ほど衛兵に見せていた勇者物語の本に視線を向けた。
「と、ところで、その本はいつも持ち歩いてるんですか?」
 私が聞くと、マギーさんは少し顔を赤らめながら、
「ええ、勇者様本人の前で言うのも恥ずかしいのですが、小さいころから『勇者物語』の大ファンでして、片時も離さず毎日五回は読んでるんです」
 そう言ってユウリの方を見た。ユウリ本人は特に愛想を振り撒くこともせず、無表情を貫いていたが、
「経緯はどうあれ、お前とその本のおかげで助かった。礼を言う」
 そう素直にお礼を言った。
「ゆゆゆ勇者様にそんなことを言っていただけるなんて光栄です! あっ、あの! もしよければこの本の表紙にサインを頂いてもよろしいですか?」
 大袈裟なくらい喜んだマギーさんは、先程よりさらに顔を真っ赤にしながらも、おずおずと先ほど大活躍した件の『勇者物語』の本をユウリの目の前に差し出し、ご丁寧に羽根ペンとインクまで用意した。
「助けてくれた礼だ。サインならいくらでも書いてやる」
「本当ですか!? ありがとうございます!!」
 まんざらでもないのか、すぐに本とペンをとりさらさらと流暢にサインをする勇者。その好意的な態度に、マギーさんはさらに嬉しさを隠し切れず、瞳を輝かせてずっとユウリがサインする様を見続けていた。
「マギーさんは勇者物語の勇者がとてもお好きなんですね」
 私があえて『勇者物語の』勇者だと強調しながら言うと、マギーさんは必死の形相で私に詰め寄った。
「み、ミオさん!! 本人を目の前にしてそんなこと言わないでください!!」
「ご、ごめんなさい!?」
 恥ずかしそうに私を窘めるマギーさんは、やはり物語の勇者とユウリを同一人物だと思っているようだ。
 私も初めてユウリに会った時、物語に出てくる
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