第二章
[8]前話
「必ずね」
「この子を幸せにするのね」
「十五歳は猫では老齢でね」
「人間で言うと七十代半ばね」
「そうだけれど最後の最後までね」
まさにその時までというのだ。
「幸せになってもらおう」
「そうね、絶対にね」
妻も頷いてだった。
すぐに二人で施設に行ってだった。
その猫バーナビーと名付けられていた彼を引き取った、そうしてすぐに自分達が経営している動物病院においてだった。
健康チェックを行ってシニア用の食事を与えてだった。
ケアを行った、するとすぐにだった。
「ニャ〜〜〜」
「僕達に懐いてくれたね」
「そうね」
夫婦は自分達に近寄り喉を鳴らすバーナビーを観て微笑んだ。
「お話通り人懐っこい子ね」
「人間を怖がらなくてね」
「やっぱりこの子はね」
「前に人に飼われていたわね」
「そうみたいだね」
「ええ、それではね」
それならと言うのだった。
「これからはね」
「この子に応えよう」
その人懐っこさにとだ、こう言ってだった。
バーナビーの為に色々としてだった、彼の為のベッドも用意した。すると。
バーナビーは毛並みがよくなり身体もふくよかになった、そして。
すっかり元気になり老猫だがあちこち動く様になってだった。
家になっている動物病院の人気者になった、夫婦だけでなく病院のスタッフにも愛される様になり。
誰が見ても幸せに過ごしていた、夫婦はそんな彼を見て笑顔で話した。
「このままね」
「ええ、ずっとね」
「幸せに過ごしてもらう」
「ここでね」
「私達の家族としてね」
「お爺さんになって辛い思いをしたけれど」
それでもというのだ。
「私達の家族になったから」
「神様が引き合わせてくれてね」
「それではね」
「うん、バーナビーはここでだよ」
「最後の最後までね」
「幸せでいてもらおう、彼を見て私達も幸せだし」
「それじゃあね」
「一緒に幸せでいよう」
こう言ってだった。
夫婦はバーナビーと一緒にいた、彼は夫婦にいつも懐き喉を鳴らしていた。その彼は誰が見ても幸せだった。
老猫を迎えた獣医 完
2022・1・29
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