Mission
Mission4 ダフネ
(4) ヘリオボーグ研究所総合開発棟14F屋上~第一区画正門
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! バホー!』
「いい、エリーゼ。今のはワタシに非があった」
「それとこれとは別問題です! ユティももうちょっと怒ってください! でないと永久にアルヴィンのオモチャにされちゃいますよ!」
「……姫ぇ〜。俺、そこまでコテンパンに言われるほどおたくをいじってないだろぉ〜」
『代わりにジュードとかレイアをいじってたじゃんかー』
「いや、ティポも、本当、いいから。そろそろ本格的に彼が沈没しそう」
事実しゃがんで地面に「の」の字を書くアルヴィンは端から見ればかわいそうだ。
ユティはアルヴィンの横にしゃがみ込む。
「ワタシ、気にしない。いじられてもぶたれても、アナタが相手なら」
「はは。うれしーねー味方ができて。でも異性相手にそういう発言は誤解を招くから程々にな」
「誤解じゃない」
ユティにとっての「アルヴィン」とこのアルヴィンが別人だと頭では処理できる。だが、長年の習慣は簡単には抜けない。ユティはどんな「アルヴィン」であれ、「アルヴィン」相手には無警戒・無防備になる。
「……なあ、おたくと俺、どっかで会った?」
「会ってない。どうして?」
「顔合わせの時。意味深な発言してくれたじゃん。今もそうだし。ひょっとして俺がエレンピオスにいた頃会ってたりして」
「ワタシたちが会ったのは、今日が初めて」
「だよな。――ま、あれだ、エルの言葉はあんま気に病む必要ねえぞ。戦場じゃ一瞬の取捨選択が生死を分ける。欲張ったら拾える命まで零しかねねえんだからさ」
「――ありがと」
アルヴィンはくしゃっとユティの頭を一つ掻き回した。
仲間の輪に戻っていくアルヴィンとエリーゼを見送る。入れ替わりにルルがやって来た。
ルルはユティを案じるように鳴く。
この猫は賢い。ユティが何者か分かっているのかもしれない。
「さっきはごめん。痛い思いさせて」
ユティは地べたに座った。ルルはのどを鳴らして足にすり寄ってくれた。
「ナァ〜」
「嘘はついてない。あの人とは今日が初対面。ユティの『ウソツキのアルおじさま』とは、これから会うんだから」
ユティは短パンの両ポケットの中身を取り出した。片や傷だらけの銀時計。片や夜光蝶の刻印入りの銀時計。
「――会えないほうが、誰にとっても幸せな結末なのは、分かってるんだけどね――」
懐中時計をポケットに戻して立ち、「そろそろ行こう」と声をかけてきた彼らを追いかける。ルルもついて来た。
建物の中に戻る。集団の少し後ろを歩いていると、足並みを遅らせてエルがユティに並んだ。
「……ルルにゆるしてもらえた?」
「うん。ほっとした。ルルは懐の広い猫だね」
「ルルがゆるしたんなら、エルも…その…ゆるしてあげていいよ、さっきのこと」
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