第二章
[8]前話
「しかしな」
「限度があって」
「それで昨日のみたいなのはだ」
「駄目ですか」
「そうだ、しかし昔のフランスの貴族はあんな髪型をしていたか」
「はい、それで何ヶ月もそのままでした」
「何ヶ月もか、その間洗わないな」
野村はこのことがすぐにわかった。
「不潔だな」
「それで虱の巣にもなりました」
「そこまでするか」
「私のものはすぐにセット出来てすぐに解けますが」
どうしてそうしているかまでは言わなかった。
「やはり重かったです」
「そうだな、本当にもうだ」
「これからはですね」
「あの髪型は駄目だ、それぞれの国や民族や宗教で髪型も違うけれどな」
その為髪型にも寛容なのだ、丸坊主にしろとは決して言わない。
「しかしな」
「限度がありますか」
「常識の範囲内で楽しめ」
髪型をというのだ。
「いいな、これからは」
「わかりました、それでは」
アントワーヌも頷いた、そうしてだった。
彼女は自分の教室に入った、だが体育の授業の時は。
その縦ロールをなびかせて白い体操服と黒のジャージで走っていた、その彼女に友人達がどうかという顔で尋ねた。
「あの、縛ったりしないの?」
「縦ロールそのままで話すの?」
「そうするの?」
「だって縦ロールはたなびかせないと」
そうしなければならないものだからだというのだ。
「そうしたものだから」
「縛らないの」
「それでそのまま授業に出るの」
「そうするの」
「ええ、ただ考えてみれば」
体育の授業に出て思うことだった。
「昨日のあの髪型は体育には」
「絶対に向かないわね」
「今の縦ロールもどうかと思うけれど」
「それでも」
「あの髪型はないわ。体育に出てもいい様な髪型なら」
野村の言うことも思い出して述べた。
「いいわね、今は」
「そうね、やっぱり」
「運動出来る位ならいいわね」
「うちの学校でも」
「それ位ね」
「そうね、今度からそうした髪型にするわ」
こう言ってだった。
アントワーヌは髪型は運動出来る位にした、すると野村も何も言わなかった。それで彼女なりの常識の範囲を知ったのだった。
校則違反ではないが 完
2022・1・26
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