Mission
Mission4 ダフネ
(3) ヘリオボーグ研究所総合開発棟14F 屋上(分史)~同(正史)
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ルの横に立った。
「エル、ルルは死なない。エリーゼが治せる。泣かないで」
そう告げるや、エルはワンピースの裾をきつく握りしめて俯いた。
「……っき、…なかったの…」
「え?」
「さっき! 何でルルも助けてくれなかったの!? エルは助けてくれたのに、何でルルは…!」
彼女は本気で怒っている。ユティの行動を、小さな体のありったけで責めている。
「よせ、エルっ。しょうがないだろう」
「あそこでルルまで助けに行ってたら、ユティだって危なかったんだよ」
ルドガーとジュードに制止されてなお、エルはユティを睨んでくる。
「ごめんなさい」
膝に手を置いて腰を直角に曲げて、頭を下げる。
「エルの友達守れなかった。ユティの力不足。だから謝る。ごめん、エル」
頭を上げる。しゃがみ込む。目線の高さはちょうどエルと同じくらい。
「でもエル。これは知っててほしい。ユティは命が惜しいと感じたことは、10歳から一度もない。他人でも、自分でも。そう在るように育てられた」
そして、ユティはそれを過酷とは感じない。そう在れと望まれ教育された思い出は、ユティにとってはむしろ誇りだった。
父を初め何人分もの期待と希望をユティは背負って、今ここにいるのだ。
「ユティがルルのとこ行って、エルとルルを遠くに投げて、2度目の落雷をユティが代わりに受ければ、エルとルル両方が助かった。でもしなかった。確実とは言えないから。ユティの命を惜しんだんじゃない、エルの安全を惜しんだ」
「……ユティは、エルを守るためなら、ルルが死んでもいいって思ったの?」
「ワタシが身を案じるのはルドガーと、ルドガーの行動理念になるエル、アナタだけ。それ以外には気を回せない。今日みたいなこと、これからもある。だから、先に謝らせて。この先もエルを泣かせる選択をすることを」
エルは裏切られたといわんばかりにユティを睨みつけたが、やがてくしゃっと顔を歪めて、背中を向けた。真後ろにいたルドガーが、エルの背を労わるように叩いた。
ユティはそれを見届け、屋上の落下防止柵へと歩いて行った。
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