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渦巻く滄海 紅き空 【下】
五十六 逃げ水
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る。
師である綱手の怪力は緻密なチャクラコントロールを活かした術によるものだ。

拳にチャクラを瞬時に集中することで爆発的に威力を高める正拳突きである【桜花衝】。
そして全力の怪力を集中させることで地面を叩き割るほどの威力を誇る【痛天脚】。

双方とも、チャクラを集中させる時にどうしても力む所作が必要だ。
だがあの白フードはそんな振る舞い、微塵も見せていない。


(五代目火影以上の怪力…いや、それ以上に緻密なチャクラコントロールで力を足裏に集中させたという事か…)


あの伝説の三忍のひとりであり、医療忍術のスペシャリストである綱手以上にチャクラのコントロールが長けているとは俄かには信じ難い。

けれど現に、地面は割れている。
瓦解した大地のせいでチョウジの突進も途絶えた。陥没した地面に足を取られ、止まる【肉弾戦車】。
叩き割られた地の割れ目に嵌まり込んで身動き取れなくなってしまっている。

更に地形を変化させられたことでシカマルの【影真似の術】も強引に解除された。



影の縛りが無くなり、自由になった飛段が「流石邪神様だぜっ」とはしゃいでいる。
その飛段に向かって、苦々しげな表情を浮かべたシカマルがクナイを投擲した。

しかしソレは掠り傷すらつけられず、ナルトと飛段のちょうど中心あたりの地面に突き刺さる。



「もう諦めちまえよ、邪神様には敵わねぇんだから」

クナイを避けた飛段が得意げにシカマルへ視線を投げた。
だが、「…なるほど」と感心するかのような声を隣から目敏く聞きつけ、すぐさまナルトを見遣る。


「こちらが本命か」
「?どういう…」


ナルトに視線を促され、飛段はそこでようやく己の身体が再び動けなくなっている事実に気づいた。
見下ろすと、ナルトと飛段、双方の影がちょうど重なり合っている箇所に、先ほどシカマルが投げたクナイが突き刺さっている。

いや、クナイとは聊か形の違うソレはチャクラ刀。
以前、猪鹿蝶だけで敵対した際に、角都と飛段の動きを地面に縫い止めたモノと同じ。

シカマルの【影真似の術】と同じ効果を発揮する武器。
即ち、チャクラ刀自体が【影真似の術】を発動しているのである。



使用者のチャクラ性質を吸収する特別な金属で出来ているチャクラ刀。
吸収したチャクラによって使用者の術に基づく効果を発揮する故に、シカマルの場合は【影真似の術】と同じ効力を発揮する。

そのチャクラ刀の内、一本は飛段をこの森へ誘い出す為に使ったが、もう一本は念の為に、秘かに影で拾って腰のポーチに収納しておいたのだ。
出番はないだろうと思っていたが、ここにおいて役に立つとは。

「万全の備えはしておいて損はないな」と苦笑するシカマルの視線を受け
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