前編
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のような造りだ。
ただ奇妙なのは、どこまで進んでも、どの部屋にも窓というものが全く無いことだ。普通なら窓があるであろう場所は壁で塞がれてしまっている。外部への出入り口も見つからない。いくら歩いていても閉塞感が強くなる一方で息が詰まりそうだ。
部屋の配置もめちゃくちゃで、整然と並んではいなかった。それどころか通路の複雑さもかなりなもので、そこらじゅうで分岐しており、ところどころに行き止まりがあったりと、まるで迷路と呼んでも良い有様だった。
こんな建物が現実にあるとは思えない。非現実感は増す一方だ。
「いくら歩いてもきりがないね。外にも出られそうにないし・・・これではここからどこにも行けない。」
さんざん歩き回った挙句に、『彼』は疲れた声でそうぼやいた。体より気持ちの疲れの方がひどかった。
ずっと大人しくついてきた彼女が、それを聞いて力なく答えた。
「・・・そうだね。どうせ私はここからどこにも行けない。」
彼女の虚ろな反応が気にはなったが、それを追及する気力もなかった。
「少しどこかで休憩したいね。」
『彼』がそう言うと、彼女は黙ってうなずいた。
その後、少し歩くと広い休憩スペースのような場所に出た。
ソファセットと大型テレビが置かれている。テレビの脇にはガラスケースに入った日本人形が飾られている。黒い和服を着た童女の人形だ。可愛らしい人形なのだろうが、状況が状況なだけにむしろ不気味に感じてしまう。
『彼』はため息をついてソファに腰を下ろした。休むにはおあつらえむきな場所だ。何の気なしに目の前にあったリモコンでテレビをつけてみる。しかし画面はただ光の砂嵐のような状態で、何も映らなかった。
その時、それまで虚ろな目でその場所を見まわしていた彼女が、不意に何かに気づいたかのように目を見開いた。確認するように通路の先に目を向ける。そして、これまではただ『彼』の後をついてくるだけだったのに、突然どこかに向かって自らの意思で歩きだした。
何も言わずに歩き去った彼女に気づいた『彼』は、慌てて立ち上がると、急いでその後を追った。
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