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ペルソナ3 迷宮の妖女
前編
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あきらかにタルタロスとは違う場所のようではあるが、それでも今なお非現実な空間に捉われているという可能性は捨てられない。
『彼』は立ち上がろうとして、左手に召喚器、右手に片手剣を握り締めていることに気づいた。
「ピストルと刀。・・・ずいぶん物騒ね。」
それを見た彼女が、驚いた様子もなく言う。
「うん・・・でも銃は飾りみたいなものなんだ。弾は出ない。剣は・・・ここに来る前に・・・その、戦ってたから・・・。」
「誰と・・・」
「なんというか・・・怪物・・・かな。」
どう説明するか迷ったが、何となく彼女の淡々とした雰囲気につられてそのまま答えてしまった。
「・・・そう・・・。怪物がいるんだね。」
彼女はそうつぶやいただけで、それ以上突っ込んで聞いてもこなかった。「怪物」という不自然な言葉を聞いても、興味もなさそうだ。相変わらず心ここにあらずと言った様子で、あまり正常な状態には見えはない。しかしその虚無的な表情にも、どこか現実離れした繊細な美しさがあった。
彼女は本当に実在する人間なのだろうか? その妖精じみた雰囲気に、どうしても違和感がぬぐえなかった。
確かに存在感はあるのだが、どうにも浮世離れしている。彼女が幻、もしくは人外の存在であっても驚かないだろう。害は無いように見えるが、いずれにしろ用心しておくに越したことはない。
さて、それでは自分はどうなのか。本当に正常な状態にあると言い切れるだろうか。自信は無かったが、あまり普段と違う感じはしない。怪我などもして無さそうだ。ならば、まずは行動してみて現状を確認することが優先だろう。
彼女に名を名乗り、自分は東京にある月光館学園高等部の2年生だと告げた。
それを聞た彼女は、何かを感じたかのように初めてはっきりとした反応を示した。
「私も学校に通っている気がする。東京じゃなくてもっと田舎の・・・。」
そう言われてみると、着物の着こなしのせいで大人びているが、案外『彼』と近い年齢のようにも見えた。
「でも、それ以上は何も頭に浮かんでこない。」
「まあ、無理に考えてもわからなそうだし、動いてみればまた何か思い出すかもしれない。とりあえずこうしていても仕方がないから、この場所を探索してみよう。」
「・・・。」
反応が鈍い。どうでもいい、という表情だ。
「君もずっとここにいるわけにはいかないだろ。」
「ずっとここに・・・。」
彼女は周りを見回して、それからあまり浮かない顔で「そうね。」と小さくため息をつくように漏らした。

彼女と共に建物の探索を始めた。『彼』が進行方向を決めて先に進み、彼女は静かに後をついてくる。
廊下を進んで行くと、あちこちに扉があり、開けるとそこには座敷がある。座卓や座布団が置かれていて、押し入れと床の間がある。どの部屋も似たような感じで、まるで旅館の客室
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