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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十四話 旧友来訪の後始末
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かりの間、豊長達の声だけが部屋に響いた。
「――蜥蜴の尻尾か?だとしても成功の見込みがないと意味がないだろうに」
 怯えている姿は眼前の少年が稀代の名優でないのならば、論理的な嘘をつく余裕があるわけないことが分かる。それ故に知らないの一点張りである勅任特務魔導官に豊久が少々焦っていることに大辺は気づいていた。
「あるいはそれすらも観察対象なのかもしれませんね
あの少年も捨て駒どころか試薬にされたといったところかもしれません」
そう言って大辺が目を向けると件の青年は容赦無い追及を受けもう可哀相な位にぐったりとしている。
「俺達が独断で血を流す訳にもいかないからか、忌々しいが主家の事を考えるとな。
――成程、まったく無粋で不埒で厭味ったらしい連中だ」
そういって俯き、豊久は思いに沈む。
「そうなると、本番は“ばれた”と向こうに知らせてからだな。
その為にも今のうちに手札を引き出さなくては――いや、絞りとらなければならんな」
そして頭を上げ、愉しそうに嗤った。
 ――どこまで本気なのか分らない、触らぬ神に何とやらだ。止めるのは豊長様達に任せよう。
大辺は妙に高揚している豊久を横目に内心眉を顰める。
「――お、もう終わりか」
当主が鳴らした呼び鈴の音に気づき、目を向けると、少年は体を抱え、膝をついていた。
震えているのが分かる。――心が折れたのだろう。

「お前達が口を挟まんから止め時を間違えた、やりすぎたな」
豊守は少し眉を顰めて。警護班が二人がかりで彼を連れていくのを気遣わしげに見ている。
「あまりやり過ぎると後始末が面倒です。
魔導院と敵対するのは危険すぎますし、何も益がありません。
警告は必要でしょうが、もう十分でしょう、後は向こうと落としどころを見つけるべきでしょうね」
豊守の言葉に豊長も頷くが、一人、豊久だけはなおも強弁をつづける。
「だからこそ、手札は引き出せるだけ引き出すべきです。」

「焦るな、馬鹿者め」
豊長が窘めると僅かに鼻白んだ様子で豊久が答えた。
「焦ってなど――いませんよ」

「いや、焦っている。功を急いている。お前は相手を見ていてもどのように攻めるかとしか見ておらん。相手を識ろうとせずに居丈高にふるまっている。要らぬ力を込めているからだ。
――前線に居すぎたか?内地に戻って浮かれたか?少し頭を冷やせ、それでは馬堂の家を継がせるわけにはいかんな」
重々しい声で馬堂家の当主は一粒種の孫を叱りつける。
「・・・・・・申し訳ありません」
豊守は穏やかな声で身を縮めた跡継ぎを諭す。
「確かに今は有事、お前の環境も変わったが時間はある。あまり焦らないことだ」

「――それで魔導院にはどう対処するのですか?」
大辺は我関せずといった様子で如才なく話題を転ずる。

「我々の
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