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冥王来訪
第一部 1977年
服務 その3
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「無口な同輩君の事、どう思うかね。
俺は、俺なりに彼のことを評価しているよ。
見どころのある男だ。陸軍に転属するなら世話してやっても良いぞ」
篁は、やんわり断った
「アイツは、そんな事をされるのを嫌がる男です。
お気遣いは、有難いですが」
彼は、右手で頬杖を突き、左手にタバコを握ったまま、答えた
「君も、顔に似合わず、はっきり物を言う男だな。
これは、モテるわけだよ」
彼は、大声を出して笑った
篁は、困惑しながら愛想笑いを浮かべるしかなかった
一頻り笑った後、彼は真顔になり、タバコをもみ消す
「例の作戦の話は聞いているかね」
首を横に振る
「F-4と、斯衛軍に納入される新型機F-5の訓練部隊を欧州に派遣することになってる。
早速だが君達も帰国した後、直ぐに欧州行きだ。
新婚早々、済まないがね」
彼は居住まいを直すと、深々と頭を下げた
「頭をお上げください。
大尉の謝る事ではありません。
それに例の大型機の実験をするという話でしょうか」
彼は、腕を組みながら、背もたれに倒れこんだ
「そうだ。
私が部隊長で、君が戦闘隊長を務める計画になっている。
何とか、乗って飛ばせるぐらいだがね……」
新しいタバコに火を点けた
深々と吸い込むと、静かに吐き出す
「もっとも、育成中の下士官や志願兵が主力になるとは思う」
巌谷が、数本の瓶を抱えて戻って来た
よく見るとコーラと炭酸飲料、オレンジジュース
彼は、静かに瓶を並べた
「好みは分かりませんでした。お好きな物を……」
彩峰は、胸元より栓抜きを出す
「ああ、頂くよ」
彼は、コーラの瓶を手に取り、栓を開ける
そして、胸から袋を取り出し、テーブルに置く
袋から出したのは、ステンレス製カップ
コーラを並々と注ぐと、勢い良く呷る
「ペプシも捨てたもんじゃないな。生き返るようだ」
其の侭、数度カップに注ぎながらコーラを飲み干す
彼は、再び語り始めた
「まあ、詳しい話は、後日、文書で出される。
覚えておいてくれればよい」
腕時計を眺めると、こう呟いた
「とりあえず、飯にでもするか。
やる事もあるまい。
君とお嬢さんとの馴初めでも話してくれよ」
彼は、周囲に散らばた小物を内ポケットに仕舞いながら、答える
巌谷と篁は、驚いた顔をしている
「俺は、世間で言われているような過激な右翼じゃない。
貴様等と、同じ宮仕えの身分。
ただ、帝国陸軍か、斯衛軍か、の違いでしかない。
情報省の辺りに居る連中の方が、過激度数は高い」
そう言って彼は立ち上がり、軍帽を被る
「お前たち、刀は?」
「流石に、持って着てませんよ」
「俺も、だよ」
彼等は談笑しながら、その場を後にした

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