第一部 1977年
服務 その3
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次官会議から、閣議に上がった時点で、ほぼ決定が慣例ではある
即座に斯衛軍F-5新規調達と、試験部隊の欧州派遣が了承された
篁祐唯問題では、異例の事態が起きた
総理と官房長官が、慣例に反して、否定し、会議は紛糾
同問題に関して、城内省の立場を否定する構えを取ったのだ
洋行中の技術将校の単なる《自由恋愛》では、済まなくなっていた
一個人の問題から、日米関係の重要課題に発展する様子さえ見えた
閣議の紛糾を余所に、情報省や城内省で、二人を別れさせる方向で話が進んでいた時、事態が動く
予想外の場所から《裁可》が出され、解決に至った
だが、裁可を出した場所が問題視された。
《城内》ではなく、《竹の園》
詰り、通常のルートを通り越し、首脳の頭越しで決まったのだ
だが、その様な解決策に、腹の虫が治まらない人々がいた
情報省と、五摂家縁者の一部、譜代武家、烈士を自称する帝国陸海軍内のはみ出し者達
彼等は、「《御所》を軽んじた」として、政府への遠回しな嫌がらせを行った
米国内の雑誌や地方紙に、情報を持ち込む暴挙に出る
持ち込んだ話の内容は、以下のような物であった
『総理が《はしゃぎ過ぎた》為、殿下から《ご下問》がなされた』
『日本政府は、ホワイトハウスに謝罪文を書く専門家を呼び寄せた』
『《曙計画》の計画段階で、日本国内から米国内に変更される様、工作を働いた』
一方の米政府は、日本政府の対応に困惑した
最初は否定的な態度であったが、一転してミラ・ブリッジスとの関係を認める回答を寄越したのだ
何かしらの高度な政治的判断があったのは間違いない
FBIに対して、引き続き調略を続ける様、ホワイトハウスは指示を出した
ほぼ同時期に、篁の使者と在ヒューストン総領事が、《私的》にブリッジス家を訪問した事実を、ラングレー(CIA本部所在地)が掴んだ
彼らの弁によると、「新春早々に日本国内で婚儀を上げる」という
この話を持ち込んだ時、副大統領は、CIA長官を慰めた
「日本人の思考回路は、奇想天外である」
ワシントン官衙では、噂として、その日の内に広まった
渦中の人、篁祐唯は、静かだった
世間の諠譟から離れ、いつも通り研究に入れ込んだ
様々な《説得》が来たが、気には留めなかった
唯、《鹵獲》された大型戦術機のメインエンジンに関して、何も記されていなかったことを除いて
通常は、その様な事があれば、報告書に記載されるはずである
無記載と言う事は、《何かしらの問題》があったと言う事だ
自分達が知らぬ間に、策謀が巡らされているのではないか
昨日、国連からオルタネイティブ3の失敗と、同計画の凍結が発表された
ソ連政府からも、米国に「《実験中の事故》で、多数の死傷者が出た」為、同計画の中止が伝えられたという
異例の事態
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