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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十六話 懺悔
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待に応えられなかった……。ヤン提督が私を見た、そして直ぐに視線を逸らした。まるで逃げるかのように……。
「会戦後、ヴァレンシュタイン提督に自分の予測より一時間来援が遅いと指摘されたよ。そしてエル・ファシルで味方を見殺しにしたように自分達を見殺しにするつもりだったのかと非難された……」
「そんな! あれはリンチ少将が私達を見捨てたのです。提督は私達を救ってくれました。非難されるなど不当です! 何も知らないくせに!」
許せない! あの時の私達の不安、絶望を知らないくせに……。リンチ少将、あの恥知らずが逃げた時、ヤン提督が居なければ私達は皆帝国に連れ去られていた。それがどれほど怖かったか……。私の身体は小刻みに震えていた、怒り、恐怖、そしてヴァレンシュタイン提督への憎悪……。
「彼の言うとおりだ」
「提督!」
驚いて提督を見た。ヤン提督は薄い笑みを浮かべている。
「提督……」
「彼の言うとおりなんだ。私はリンチ少将が私達を見捨てる事を知っていた。そしてそれを利用した。私のした事はリンチ少将のした事と何ら変わらない……。今、リンチ少将がここに居たら私は彼と目を合わせる事が出来ないだろう、やましさからね。……私は、……私は英雄なんかじゃない!」
「……」
吐き捨てるような口調だった。ヤン提督は苦しんでいる、でも私は何も言えなかった……。どれほど提督に非が無いと私が言っても提督は納得しないだろう。それでも無言で居る事は耐えられなかった。なんとか提督を救いたい、そんな気持ちで言葉を出した。
「ですが……、ヴァンフリート星域の会戦は同盟軍の勝利で終わりました。その一時間が問題になるとは思えないのですが……」
ヤン提督が私を見て苦笑を漏らした。
「バグダッシュ准将が大尉と同じ事を言ったよ。戦争は勝った、何故その一時間に拘るのかと」
「……」
「第五艦隊はヴァンフリート4=2に停泊中のグリンメルスハウゼン艦隊を撃破した。一万二千隻程の敵艦隊の内、逃れる事が出来たのは五百隻程度だったはずだ。本来なら大勝利と言って良い、だがその五百隻の中にラインハルト・フォン・ミューゼルの艦隊が有ったんだ……」
「!」
ラインハルト・フォン・ミューゼル、ヴァレンシュタイン中将が天才だと評し恐れている人物。その人物がヴァンフリート4=2に居た、そして逃げた……。彼は今帝国軍中将になり宇宙艦隊司令長官、オフレッサー元帥の信頼が厚いと聞く。驚愕する私の耳朶にヤン提督の自嘲交じりの声が聞こえる。
「ヴァレンシュタイン中将は私達にこう言った。彼を相手に中途半端な勝利など有り得ない、だが彼は未だ階級が低くその能力を十分に発揮できない。だから必ず勝てる、必ず彼を殺せるだけの手を打った。おそらく最初で最後のチャンスだったはずだと……。そしてこ
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