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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十六話 懺悔
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は彼の娘だった。ブラウンシュバイク公がヴァレンシュタイン提督を登用すればどうなるか……。それを皆が恐れたんだ」

溜息が出そうになった。ブラウンシュバイク公と繋がりが有る……。現在では女帝夫君として帝国の統治に関わっている。当時だけじゃない、英雄と称される現在でも公との繋がりなど到底放置できなかっただろう。帝国への帰還など論外と言って良い。

「ヴァレンシュタイン提督はヴァンフリート4=2に行くことを嫌がった。彼は帝国に戻る事を望んでいたのだと思う。しかし最終的には行くことに同意した、彼の要求を最優先で叶えることを条件に……」
「……」

「私は当時第八艦隊司令部に居た。だがヴァレンシュタイン提督の要請で第五艦隊司令部に異動になった」
「第五艦隊?」
ヤン提督が頷いた。提督の表情は暗い。

第五艦隊はヴァンフリート星域の会戦に参加している。ヤン提督はヴァレンシュタイン提督の要請で第五艦隊に異動になった……。つまりヤン提督の協力が必要だったという事だろう……。ヤン提督は憂欝そうな表情をしている。提督は協力できなかった、そういう事なのだろうか? しかし戦争は同盟の大勝利で終わっている。第五艦隊は決戦の場で活躍した殊勲艦隊のはずだ。ヴァンフリートの一時間、一体何を意味するのか……。

「ヴァレンシュタイン提督は戦いが酷い混戦になるだろうと想定していた。おそらくロボス総司令官は軍を把握できなくなると……。そしてヴァンフリート4=2が最終的に決戦の場になるとも想定していた。いや、正確には決戦の場にする事で自らが戦争をコントロールしようとした、私はそう思っている」
「……そんな事が可能なのでしょうか」

ヴァレンシュタイン提督は当時まだ少佐だったはずだ。しかも総司令部の参謀でもなかった……。
「可能だと思ったのだろうね。そして実際に会戦はヴァレンシュタイン提督のコントロール下に置かれた……。彼が私に望んだ事はロボス総司令官が軍を把握できなくなった場合、そして帝国軍がヴァンフリート4=2に襲来した場合、第五艦隊を速やかにヴァンフリート4=2へ導く事だった……」

ヤン提督はそれきり黙り込んだ。憂鬱そうな横顔だ、視線は小さくなりつつあるハトホルに向けられている。
「……一時間と言うのは……」
私が問いかけるとヤン提督は微かに横顔に笑みを浮かべた。苦笑? 自嘲だろうか、そして口を開いた。

「そう、ヴァンフリート4=2への移動が一時間遅れた。第五艦隊が基地からの救援要請を受け取った時、私は基地の救援をビュコック提督に進言したんだが第五艦隊司令部の参謀達がそれに反対した……。最終的にはビュコック提督が基地の救援を命じたが一時間はロスしただろう」

ヤン提督はまだ笑みを浮かべている。多分自嘲だろう、提督はヴァレンシュタイン提督の期
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