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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十六話 懺悔
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える。第三艦隊旗艦ク・ホリンに比べるとアンテナが多い、通信機能を充実したようだ。ハトホルを見ているとヤン提督の呟きが聞こえた。
「ヴァンフリートの一時間か……」

驚いて提督に視線を向けると提督は私に気付いたのだろう、視線を避ける様に顔を背けた。“ヴァンフリートの一時間”、以前にも聞いた事が有る。あれは第七次イゼルローン要塞攻略戦でのことだった。あの時、ワイドボーン提督がヤン提督に言った言葉だった。“ヴァンフリートの一時間から目を逸らすつもりか?”……。一体どういう意味なのか、分かっているのはそれがヴァレンシュタイン提督に関係しているという事だけだ……。

ヤン提督が私を見た、そしてまた視線を逸らした。気にはなる、でも聞くべきではないのだろう、そう思った時だった。
「気になるかな、グリーンヒル大尉」
「あ、いえ」

戸惑う私にヤン提督は困ったように笑いかけた。そして笑いを収めると話し始めた。
「知っていてもらった方が良いだろう……。ヴァンフリート星域の会戦は同盟の大勝利で終わった」
「はい」
私の返事にヤン提督が頷いた。

「だが何人かにとっては勝利とは言えない結果になった」
「……ロボス元帥、フォーク中佐の事でしょうか」
「いやヴァレンシュタイン提督、バグダッシュ准将、ミハマ中佐、そして私……」

どういう意味だろう、ヴァンフリート星域の会戦は誰が見ても大勝利だったはずだ、それが勝利ではない? 決戦の場に間に合わなかったロボス元帥、フォーク中佐ならともかく、ヴァレンシュタイン提督まで? 不思議に思っていると提督が溜息を吐いた。

「あの戦いでヴァレンシュタイン提督はヴァンフリート4=2の基地に配属された。その目的は二つ、一つは彼の用兵家としての力量を確認する事。もう一つは彼を帝国軍と直接戦闘させることで帝国への帰還を諦めさせること……」

「帰還を諦めさせる……」
思わず言葉に出した。ヤン提督が頷く、でも提督は私を見てはいない。連絡艇の窓からハトホルを見ている。そして呟くように話し出した。

「そう、シトレ元帥は彼が帝国の有力者と繋がりが有ると考えていた。結局それは過ちだったが当時は彼が帝国に戻れば同盟の機密が帝国に筒抜けになると皆が心配したんだ。過剰反応だとは思わない、彼は鋭すぎた……」

ヤン提督が首を横に振っている。ミハマ中佐の言葉を思い出した。宇宙艦隊司令部に赴任した時の中佐の言葉、“とても鋭い人”、彼女はヴァレンシュタイン提督をそう評していた。私自身何度かヴァレンシュタイン提督の鋭さに驚いた覚えが有る。シトレ元帥の恐れが杞憂だと笑うことは出来ないだろう。

「その、帝国の有力者と言うのは……」
私の質問にヤン提督は一瞬口籠った。
「……ブラウンシュバイク公だ。当時、次期皇帝の最有力候補
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