第十七章 それでも時はやさしく微笑む
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場内には、入り切れないほどの人々が集まっている。
が、熱気喧騒とは、無縁どころか正反対の粛々たる空気。
ここがどこであるかを考えれば、当然だろう。
大人たちはみな、黒い上下に身を包んでいる。
生徒と思われる子供たちは、ほとんどが同じ制服姿。
我孫子市立天王台第三中学校の制服だ。
その学校制服たちの中には、令堂和咲の姿もある。
彼女は今、焼香をしているところだ。
お経と木魚を打つ音の中、焼香台の前に立っている。
礼をすると、抹香を摘んだ。
隣には、明木治奈。
二人は、手を合わせ、礼をし、下がり、仏の遺族たちへと礼をする。
入れ替わりに、次の生徒たちが二人、立ち上がって焼香台へと向かう。
告別式である。
先日亡くなった、樋口校長の。
式場の奥に、花々に囲まれて桐の棺が置かれている。
既に納棺されており、仏と対面するための小窓も閉じられている。
花束を敷き詰める作業も、スタッフによって完了済だ。
遺体が、あまりにむごたらしいためである。
殺害、されたのである。
首を切断されて、なおかつ、その顔からは眼球が二つともくり抜かれていた。
そんな、ショッキングな殺され方で。
現在、首は胴体に縫い付けられており、目にも義眼がはめられている。
だからといって、姿を晒すのもどうなのか、そもそも恐怖に歪み切った顔を生徒さんに見せるのも、情操上どうなのか。そんな、遺族の意向配慮によるものとのことだ。
死後五日。
発見されてから、三日。
殺害現場は学校の中。
自身の城であるはずの、校長室で殺されていた。
発見者は須黒美里。教員である。
教員であり、メンシュヴェルトメンバーである。
もっと有り体にいうならば、樋口校長の片腕、メンシュヴェルト活動における参謀である。
先日、須黒先生の自宅に、ヴァイスタが出現した。
魔法使いであるアサキたちもいたのだが、クラフトが機能せず、魔道着姿へと変身することが出来なかった。
メンシュヴェルトのサーバーへの、通信が拒否されていたためである。
そのことについて相談しようと、早朝の校長室を訪れて、死体を発見したのだ。
リヒトに牛耳られている可能性もあるとして警戒し、これまでメンシュヴェルト上層部への接触を避けていた須黒先生であるが、こうなっては是非もなく、ことを報告するしかなかった。
過去に何度か会ったことのある、幹部の一人
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