第十七章 それでも時はやさしく微笑む
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》戸地区。
淡く夕陽の差し込む住宅街の道を、令堂和咲が一人で歩いている。
中学校の制服姿であるが、通学途中ではない。
樋口校長の告別式に参列した、その帰りだ。
太陽はまだ沈んでいない。
だが、アサキは表情は、どんより沈み切っていた。
葬儀の帰りに明るい顔もないが、そういうことではなく、式場での、自分の行動を後悔しているのだ。
至垂徳柳の姿を見て、怒りのあまり取り乱してしまったことを。
今回は一般葬であり、メンシュヴェルトやリヒトと関係のない人の方が遥かに多い。そんな場所だというのに、我を忘れて、大きな声で叫び、糾弾してしまったのだ。
反省している。
無関係の人々を、無駄に騒がせてしまったことを。
それだけでなく、至垂の持つ野望を阻止するためにも、冷静でなければならないというのに。
至垂の持つ野望。
超ヴァイスタを作り出し、「絶対世界」への扉を開くこと。
そこで、神の力を手に入れること。
人間の身であることを鑑みない、傲慢な考えだ。
絶対に、阻止しなければならない。
阻止し、彼がこれまでなにをしてきたかを、すべて暴く。
その上で、罪に対して相応の償いをさせたい。
そのためには、冷静に物事を判断出来ないといけない。
誰が味方か、誰が敵か、分からない。ある意味で四面楚歌の、絶対的不利。
アサキたちが置かれているのは、そういう状況であるのだから。
ただ泣き叫ぶだけなら、いつでも出来る。
現在はまだ、その時じゃない。
だから、あの自分の取ってしまった態度は、反省しないと。
冷静にならないと。
そう分かっている。
理屈では。
でも。
そこまで大人になんか、なれないよ。
悲しいことに耐えて、責めるべき悪の前でへらへら笑っているだなんて、出来るはずないよ。
お前がやらなきゃ、とか、カズミちゃんも治奈ちゃんも、いうけど……
魔力量がどうとか、みんな、やたらわたしを持ち上げるけど、そんなの知らないよ。
わたしはまだ、十四年しか生きていないんだ。
そんなことを思いながら、暗い顔で自宅への道を歩くアサキであるが、
その目が、すっと細くなった。
鋭い視線を、左右に走らせていた。
背後、いや周囲に、微かな気配を感じたのだ。
味方ではないどころか、どちらかといえば敵対的な気配を。
四……五人。
間違いない。五人だ。
全員、魔法使い。魔道着を着て、武器を持っている。
など、肌に感じる微かな
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