第十七章 それでも時はやさしく微笑む
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からだ。
従って、異動や交代も慎重だ。
なんらかのアクシデントがない限り、ずっと同じ顔合わせで、仕事をすることが多い。
人数の少なさにしても、配属の長期傾向にしても、より顕著なのが天王台第三中学だ。
樋口校長は、十年前から。
須黒先生は、六年前から。
気の置けない、信頼し合えるパートナーに育っていただけに、今回の件は、辛さ並大抵のものではないだろう。
転入からまだ半年しか経っていない自分ですら、ショックで夜通し大泣きしたのだ。
須黒先生は、その百倍も千倍も辛く悲しいだろう。
そんなことを考えながら、アサキは、治奈と一緒に戻り、パイプ椅子に座った。
先に焼香を済ませている、カズミや祥子のいる近くに。
ふう。
アサキは、微かなため息を吐いた。
最近、葬式続きだ。
大鳥正香、平家成葉、慶賀応芽、そして、今回の樋口校長。
魔法使いとして、ヴァイスタと戦ったその結果。であれば、分かる。嫌だけど、理解は出来る。
しかし、
正香は、幼少期の家庭内殺人という過去を、引きずった挙げ句、絶望からヴァイスタ化。昇天つまり処分された。
成葉は、そのヴァイスタ化した正香に、顔と内臓を食われ死亡した。
応芽は、魔道着を制御出来ず暴走させてしまい、自分の作り出した妹の幻影に刺されて消滅。
そして今回の、樋口校長の死。
すべて魔法使いの活動が絡むところではあるため、仕方がないことかも知れないが。
でも、
でも、
酷いよ。
悲し過ぎるよ。
あまりにも、残酷過ぎる。
ちらりと、前の席に座っている須黒先生の、小さくなっている背中を見たら、また奥から込み上げて、く、と呻いた。
じわり涙が染み出して、人差し指で拭った。
そんなアサキを見ながら、カズミが申し訳なさそうな表情で、
「悪いけど、もうあたし泣けないや。なんだかすっかり、感覚が麻痺しちゃって……」
言葉途中で、びくり肩を震わせた。
アサキが、
うー、うーー、と呻きながら、
ぼろぼろ、ぼろぼろ、大粒の涙をこぼしていたのである。
「どうしてお前は、そんなに真っ直ぐなんだよ」
カズミは苦笑しながら身体を伸ばし、なおもえくえくと嗚咽の声を上げるアサキの肩を、優しく抱いた。
と、そのカズミの視線が、すっ、すっ、と注意深く動いた。
アサキと反対側に座る祥子の肩が、ぴくり震えるのに横目で気付き、続いて、祥子がなにに肩を震わせたのか、視線を追ったのである。
振り向いたカズミの、視線の先にいるのは
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