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俺様勇者と武闘家日記
第2部
エジンベア
いざ、エジンベアへ
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「なるほど、グリーンオーブですか……」
 テドンを離れ、行き先をエジンベアにした私たちは、再びポルトガ近海に向かって北上していた。
「オーブを手に入れるのに、『最後の鍵』が必要だという。その鍵がエジンベアにあればいいんだがな」
 船長室でヒックスさんと会話するユウリは、再び船酔いに見舞われていた。テドンの時程ではないけれど、ずっと立っているのは辛いらしく、ここ数日は船室にいることが多い。それでも次の進路を決めるのに、パーティーのリーダーとしてヒックスさんと話し合わなければならないこともあるため、無理してでも外に出なくてはならないのだそうだ。
「方角的にはただ北へ進めばいいのですが、距離がありますので二週間はかかります。それでもよろしいですか?」
顔色の優れないユウリを慮ってか、ヒックスさんが心配そうに尋ねる。だが、当のユウリは即座に頷いた。
「ああ、構わない。一度町に着いてしまえば、ルーラでいつでもその町に行くことができるしな」
 そう、ユウリにはルーラの呪文がある。術者、つまりユウリが一度訪れた町なら、船を使わずとも一瞬でその町に行けるのだ。とはいえ、どんな場所でも行くことができるわけではないらしい。ユウリ曰く、ルーラの呪文というのは、対象の場所にいる人間が持つ魔力に反応して術者ごとその魔力に引き寄せられる術らしい。なので対象となる場所に、ある程度魔力を持つ者がいなければ反応することはない。例えばダンジョンや、人の少ない集落では、魔力を保有している人間が少ないから、ルーラの対象にはならないそうだ。
 あと、バハラタでカンダタの子分ごとルーラで移動することができなかったように、移動する人数が多いほど魔力の消費量は激しい。数人程度なら問題ないが、大勢の人間や物、大きな乗り物などは相当の魔力を消費する。出来ないことはないと言うが、なるべくなら使いたくないらしい。
 ちなみに行ったことのない街に行けないのは、魔力に引き寄せられる際、術者の記憶を媒介としているからだ。だからユウリが一度も訪れたことのないエジンベアは、今の段階ではルーラで行くことは出来ないのだ。
 地図を見ると、どうやらエジンベアは、ポルトガよりも北東に位置する小さな島国らしい。ヒックスさんによれば、昔は頻繁に船で他国間を行き来していたが、魔物がはびこるこのご時世にわざわざ危険を冒して海に出ようとは思わないようで、今では逆に鎖国的な雰囲気になっているそうだ。
「私も滅多にエジンベアには寄らないのですが、どうもあそこの国は苦手ですね」
 国によって苦手かそうでないかがあるのだろうか。今までそう感じた国を訪れたことがないのでピンと来ない。
 すると、ヒックスさんが思いついたようにポンと手を叩いた。
「そうそう、入国する際には、身だしなみに気を付けた方がいいですよ」
「身だしな
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