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冥王来訪
第一部 1977年
霈 その2
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えた
「どういうことだね」
左手で、灰皿を引き寄せ、ホルダーからタバコを外す
右手に燻るタバコを持ちながら、問いに答える
「非常時と言う事で《占領地》に協力を申し付けるのさ」
彼は呆れ果てた様な表情で、男を見た
「今更、その様な古い理論を……」
男は、右手で、タバコを静かに消した
「遣るしか有るまい。そしてそれを交渉材料にすれば、軟着陸できる方策があるはずだ」
ベルンハルトは、背筋を伸ばしたまま、再び尋ねた
「仮に挙国一致の統一が成っても、社会主義のシステムを内包したまま、統一を図ると言う事ですか」

屋敷の主人は驚いた顔をしながら、彼を凝視した
「詳しく話してくれ」
彼は、断りを入れてから話した
「思い付きですがね」
「自分が空想するのですが、国土の統一はなっても、両方の社会システムを維持したまま、穏便に時間をかけてどちらかの体制をとるか、或いは片方の制度に移行する期間を設けるべきかと」
彼は、横目で、周囲を見る
少将は、熱心にタバコを吸いながら聞いている
義父は、腕を組んで、深く椅子に腰かけている
男は前のめりになって、問うてきた
「つまり、一国に統一した後、2つの制度で、運営すると」
彼は、身じろぎせず話す
「そうです」
男は、背もたれに寄り掛かる
目を閉じて、一頻り悩んだ後、こう言った
「(西ドイツの)ブルジョア選挙(普通選挙)で前衛党(共産党、社会主義政党)が、議会を支配するようになれば、上手く行くやもしれん」
アーベルが、組んでいた手をほどき、ひじ掛けに手をかけて、身を起こす
そして男の方を向き、囁く
「ワイマールの悪夢を再び見ろというのかね……」
男は、鋭い眼光で返した
「向こうの情報はこっちに筒抜けだから、上手く操縦できるさ」
ベルンハルトは恐る恐る尋ねた
「仮に、ブルジョア選挙で上手くいっても、民主集中制(プロレタリア独裁)の問題で、行き詰りそうですが……」
二人は唖然といた

タバコを吸い終えた、少将が、静かに低い声を掛ける
今までに聞いたことのない声の低さであった
「それ以上の話は、中央委員会であんた等がやって呉れ。
俺達は、軍人だ。命令や陳情を受け入れるのみ」
男は少将の一声に驚いて、冷静さを取り戻した
「たしかにそうだな。茶坊主共を片付けるのを優先にしよう。
捕らぬ狸の皮算用をしても目先のBETA、売国奴共にケジメをつけないと話が前に進まないしな」
アーベルが、勢い良く椅子から立ち上がった
「それではお暇させてもらうよ」
それに続いて、青年と少将も立ち上がる
右手で、机に置いた軍帽を持ち上げる
「俺の方で可能な限り動いてやるよ。茶坊主共が、娘さんには手出しさせない様にな」
彼は男に右手を差し出し、男も応じて強く握手する
「頼む。あの様な
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