第二章
[8]前話
耳が聞こえにくくなったので病院に行った、そうして診てもらったが。
耳鼻科の医師にだ、曇った顔で聞かれた。
「耳掃除していま?」
「耳のですか」
「はい、していますか?」
「子供の頃母にしてもらっていました」
若葉はその頃のことを思い出して答えた。
「そういえば」
「あの、それからは」
「ええと」
言われて戸惑いつつ答えた。
「そういえば」
「ずっとですか」
「していないです」
「あの、耳垢がです」
これがというのだ。
「もう十数年分ありました」
「そうですか」
「はい、ずっとお掃除されてなかったんですね」
「母にそうしてもらったのが十歳までだったでしょうか」
医師に自分の記憶を辿りつつ答えた。
「そういえば」
「そうですか」
「今二十五歳です」
大学を卒業して就職して三年目である。
「それまでは」
「そうですか、あの耳もです」
「お掃除しないとですか」
「耳垢が溜まりますので」
「気をつけることですね」
「そうして下さい」
こう若葉に話した、この時彼女は病院で耳の中を奇麗にしてもらった。そしてその後で職場で早苗にこのことを話すと。
早苗は意外という顔になって若葉に言った。
「奇麗好きなあんたでも」
「ええ、忘れてたわ」
「耳のことはなのね」
「完全にね」
「それで耳垢がなのね」
「凄いことになっていたのよ」
「成程ね、じゃあこれからは」
早苗は若葉に言った。
「耳のこともね」
「注意するわ、耳自体は洗っていたけれど」
入浴の時にというのだ。
「耳の穴はね」
「そうだったから」
「これからはお掃除するわ」
「じゃあそうしてね」
「ええ、そうするわ」
こう言ってだった。
若葉は耳掃除もすることにした、それから耳が聞こえにくくなることはなくなった。そしてそちらもいつも奇麗になった。
耳の中まで清潔に 完
2021・12・28
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