限られた命
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じゃないか。なあ、セイバー。少し話をしないか?」
「話?」
トレギアの言葉に、煉獄が顔をしかめた。
「君と俺が何の話をする? 初対面だが、俺はすでに君のことが嫌いだ」
「へえ……それは悲しいねえ」
トレギアは頭を振った。
「私も私が嫌いだよ。この仮面を付ける前の私がね……」
「どうやら、俺と君とでは物事の価値基準が違うようだ」
トレギアは首を振る。
「セイバー。君の力は、この聖杯戦争でも比類なき力だろう。そして、自慢ではないが私もそれなりの力を持つ」
トレギアは肩の高さに右手を挙げた。
「私と君が組めば、もうこの聖杯戦争で、私達を止められる者はいない。君の願いさえも叶うだろう」
「願い?」
「あるのだろう? 君にも願いが」
「……ないな」
煉獄は首を振った。
「俺は死す時、すでに願いを叶えた。常に鬼を倒したいと願っていたから、それを聖杯が聞き届けてしまったのだろう」
「へえ……鬼か……よほど過酷な戦いをしてきたんだろう?」
「それがどうした?」
煉獄は、日輪刀に込めた敵意を隠すことなく吐き捨てた。
「いやあ、中々の技の練度だと思ってね」
「君には関係ないだろう」
「いやいや。まあ、そう言うな。見たところ、君は人間としても最盛期ではない。これから、まだ強くなる。いやはや、才能とは恐ろしいものだ」
トレギアは「ふう……」と深く息を吐いた。
「だが、君は、地球人……人間だろう?」
トレギアの目が赤く光る。
「所詮、人間の力など限界がある。だが君ほどの能力は、ただの人間の数十年の寿命にしておくには惜しい。だが、闇の力は別だ。永遠の命、永遠の力……」
その言葉と共に、トレギアの背後に別の影が浮かび上がる。
顔のような胴体と、一つ目の怪物。全体的に青い体色をしており、長く赤い髪が棘のように背中から突き出ている。
「あれは……!?」
「邪神魔獣グリムド。まあ、私の力の根源、とでも言おうか」
「……」
グリムドと呼ばれた怪物へ、煉獄は怪訝な顔を向けた。
トレギアは続ける。
「闇はいいぞ、セイバー。無限の力、永遠の命。それこそ、この聖杯戦争で誰もが求める力を与えてくれる。もう一体くらい、こういう闇の怪物はいるんだよ。君にあげるよ、セイバー」
すると、トレギアの前に、闇が再び形となる。
巨大なアンモナイトを背負った怪物。その左右から伸びる甲殻の腕と、その足元に蠢く無数の触手。一本一本が人の腕ほども太く、それが絹のようにしなやかに動き回っている。
そして、何よりもその顔。目の上に口と、あたかも真下の生命を見下すような顔をしている。
「何だ? その物の怪は」
「邪神ガタノゾーア」
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