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下馬評を覆し
第十四章
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「絶対そうしたい」
「そう思ってくれるならだ」
「うん、俺は抑える。後は打線に任せるよ」
「その意気で投げてくれ」
 こう言ってマウンドはマクガフに任せた。リードをする中村にも全幅の信頼を置いたうえで託した。
 マクガフは十回を抑え十一回もそうした、そして残るはだった。
「あと一回だな」
「十二回だな」
「ここで決めてくれよ」
「今日で決めてくれ」
「そうしてくれ」
 極寒の神戸で燕を愛する者達は祈った、だがあっという間にツーアウトに追い込まれ。
 これは駄目かと思われた、しかし塩見がだった。
 吉田とやらから打った、ボールはレフト前に至り彼は出塁した。ツーアウト一塁となった。僅かなそれも海の中の藁の様なチャンスだった。
 だが高津は今こそ決めるべきだと感じ取った、それでチームの代打の切り札でありそれの神様と言われる川端慎吾に声をかけた。
「頼むぞ」
「俺がですね」
「そうだ、決めてくれるな」
「わかりました」
 川端はこう言って頷いた、そうしてだった。
 寡黙にバッターボックスに入った、ここでヤクルトを愛する者の誰もが彼に願った。
「打ってくれ」
「ここはもうあんたしかいない」
「代打の神様の本領発揮してくれ」
「決めて千両役者になってくれ」
「これまでずっとチームの為に頑張ってくれたんだ」
「今もそうしてくれ」
「日本一決めてくれ!」
 祈った、すると。
 パスボールが出て塩見は二塁に進むことが出来た、これで得点圏にランナーが入り一打で勝ち越しとなる条件が整った。
 しかし勝負は非情である、川端はツーボールツーストライクまで追い込まれてしまった、粘るが六球投げさせてそうなっていた。
「あと一球で終わりか」
「観ている方が辛いな」
「長い試合になってるし」
「川端も必死だしな」
「何とか打ってくれ」
「そうしてくれよ」
 誰もがこれまで以上に祈った、野球場だけでなくだった。  
 テレビの前でもインターネットの前でもだった、ヤクルトを愛する者達は勝利を心から願った。その中でだった。
 吉田とやらが七球目を放った、それはスライダーであり。
 川端の目にはその球筋がはっきりと見えた、彼はそのスライダーにバットを合わせて振った。
「やってやる!」
 心の中で叫んでだった、バットに魂を込めて振り切った、すると。
 ボールは詰まっていた、だがそれでもレフト前に落ちた、既にツーアウトツーストライクだったことからスタートを切っていた塩見は迷わなかった。
「走れ!走れ!走れ!」
「ホームまで駆け抜けろ!」
「勝ち越しだ!」
「日本一を勝ち取るんだ!」
 誰もがその塩見に熱い声を送った、その声そこにある心が彼の背中を押した。塩見は迷わず三塁ベースを回った。
 そのままホーム駆け
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