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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
後日談 今日は
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ってもおかしくは無かった。実際に艦隊は正規艦隊からは外れる事になった。しかし全員昇進したし異動も無かった。司令長官は艦隊には全く手をつけなかったのだ。

今では新司令官としてシュトックハウゼン上級大将が司令官となりいずれはイゼルローン要塞を攻略する事になるらしい。司令長官配下の艦隊としての扱いは全く変わっていない……。

「司令長官は鷹揚な方でそんな根に持つ方ではないのかもしれんぞ。俺達が感じ過ぎなだけなのかもしれん」
「そう思うか」
だからな、ビューロー。その縋る様な目は止めろ。つい頭を撫でたくなるじゃないか。

「少なくとも司令長官は公平な方だし陰険な方でもない。悪い方じゃないだろう」
「……そうだな」
「そうさ、俺達にとってはそれで十分じゃないか」
「……そうだな」
ビューローが幾分困惑した様な表情で頷いた……。

これで一ヶ月位は持つかな。来月の末ぐらいにはまた酒を飲みながら愚痴を零すだろう。今度はどっちかな、最近はビューローが多いから今度は俺かもしれん……。それにしてもあの時の第359遊撃部隊がいまだに祟るとは……、人間どんなところで躓くか分からんな。

五年半前、帝国を揺るがした事件が発生した。サイオキシン麻薬事件だ。一年間、軍が外征を取り止めるほどの大事件だった。軍の一部に辺境の基地でサイオキシン麻薬を密造。軍、そして民間に流す事で利益を上げていた連中が居た。

サイオキシン麻薬が非常に危険な事は皆が分かっていた。警察はサイオキシン麻薬の撲滅に力を入れていたが結果を出せずにいた。当然だろう、事が事だ、誰も軍人がそんな事をしているとは思っていなかったのだ。サイオキシン麻薬の被害は確実に帝国を蝕んでいた。

その事件の摘発のきっかけを作ったのがヴァレンシュタイン大尉だった。大尉は少佐に昇進しそれ以後エーレンベルク、ミュッケンベルガー両元帥の信任を得ることになった。苦い思い出だな、あの頃の事は……。

気が付けばビューローがテーブルに突っ伏していた。
「おい、ビューロー、寝るな、寝るんじゃない」
「……お許しを、お許しを……」
ビューローは突っ伏したまま誰かに謝っている。どんな夢を見ているのかと思うと溜息が出た。また俺がこいつを背負って帰るのか……。酔っ払いって重いんだよな……。

二人で司令長官に謝ってしまおうか。しかし、俺達の気の所為だったらそれこそ笑い話だろう。いや、笑い話なら良い。司令長官に軽蔑されたら……。

“卿らは私の事をそんなつまらない人間だと思っていたのですか”

冷たい視線で見据えられる光景が目に浮かぶ。はーっ、厄介な人だ。怖いし嫌われてるかもしれないから近づきたくは無いんだが、軽蔑はされたくない、どうしたもんだろう……。

もう一度あのころに戻れたら……。


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