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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
後日談 今日は
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督のクールな所は何処となくヴァレンシュタイン司令長官に似ているような気もする。

「でもなあ、ベルゲングリューン。ミッターマイヤー提督はこう言われるのだ、“やっぱり司令長官は卿の事を気にしているのだな、羨ましい事だ”と……、何処が羨ましいのだ? 俺は少しも喜べん、卿なら喜べるか?」
「いいや、俺が卿の立場でも喜べんな」

五年半前、第359遊撃部隊に三人の少佐が居た。ヴァレンシュタイン少佐、ビューロー少佐、そして俺ベルゲングリューン少佐……。ヴァレンシュタイン少佐はミュッケンベルガー元帥、エーレンベルク元帥の秘蔵っ子だった。

俺達はそんなヴァレンシュタイン少佐に反感を持った。能力が有る事は分かったが彼を受け入れる事が出来なかったのだ。変に話しかけて取り入ろうとしているんじゃないかと思われても詰まらんし、司令長官から元帥達に妙な士官が居ると言われるのも御免だった。俺達は碌に話すこともなく過ごした。当然ヴァレンシュタイン少佐も俺達に良い感情は持たなかっただろう。

そして今、ヴァレンシュタイン少佐は宇宙艦隊司令長官ヴァレンシュタイン元帥になり、俺とビューローは正規艦隊の司令部幕僚を務めている。俺はロイエンタール提督、ビューローはミッターマイヤー提督。しかもヴァレンシュタイン司令長官の抜擢によって幕僚になった……。

出世コースなんだよな、どう見ても俺とビューローは出世コースを歩いているとしか思えない。しかし俺達はそれを素直に喜べずにいる。ヴァレンシュタイン司令長官は俺達を嫌っているはずだ。それなのに旗下の正規艦隊の司令部幕僚に抜擢した……。どういう訳だろう、本当に何の意味もないのだろうか……。

「ベルゲングリューン、ヴァレンシュタイン司令長官はな、難しい顔をして書類を見ていたのだ」
ビューロー、お前の方が難しい顔をしているぞ。

「うむ、偉くなるにつれて抱える問題も大きくなるのさ。おかしな話ではないぞ」
出来るだけ気楽に言ったつもりだったがビューローの表情は変わらなかった。

「しかしな、俺が申請書を持って行くと直ぐにサインをしてくれたのだ」
卿、俺の話を聞いているか?
「なるほど、司令長官はサインをしたのだな」
「そうだ、そして“今日は”と言われたんだ」
……四回目だ。

「その後、“何でもありません”と言ったんだよな」
俺が先回りして言うとビューローはちょっと傷ついたような表情をした。いかんな、ビューローを傷つけてしまったか……。しかし、そろそろ切り上げないと……。

「そうだ、“何でもありません”と言ったんだ。本当は何を言いたかったんだと思う?」
俺に聞くな、分かるわけがないだろう。それにビューロー、そんな縋る様な目をするんじゃない。近所で飼っているポメラニアンを思い出すじゃないか。

「さ
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