暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【下】
五十五 面影
[5/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
青筋を立てる再不斬だが、諦めたように溜息を吐いた。
慣れた調子で、視線こそカカシとヤマトに向けているものの、隣の白フードと会話を続ける。


「対価ってヤツだろうさ。首輪をつけてないと木ノ葉は不安なんだろ」
「おまえは首輪如きで大人しくなるタマじゃないだろ」
「なにを今更。精々、手を焼いてもらうとするさ。おまえに」
「俺か」


まるでカカシとヤマトがいないかのように振る舞う。
自分達を敵とも思わず、余裕綽々な二人の態度は、木ノ葉の忍びの矜持を傷つけた。


「ヤマト、逃がすな…!」
「もちろん…!!」


カカシに従い、ヤマトが素早く印を結ぶ。

「【木遁・四柱牢の術】…!!」


木遁の術の発動。
地中から多数の角材が生成され、瞬く間に形成された牢屋が再不斬と白フードを閉じ込める。


ヤマトの術で牢獄内に囚われた再不斬と白フード目掛け、カカシが地を蹴った。
片手がバチバチ、と光を帯び、チッチッチ…と鳥が啼く。

普段は下ろしている額当て。
それを押し上げ、露わになったカカシの瞳が赤い渦を巻いていた。

目に見える電撃となったチャクラが地面をも抉って、白フードと再不斬が囚われた牢獄へ押し寄せる。
カカシの【雷切】を見て、眼の色を変えた再不斬が首切り包丁を振り被った。


しかし、その刃先はヤマトの【四柱牢】には傷ひとつつけられない。
「チッ、」と舌打ちする再不斬に、ヤマトは「無駄だよ」と口許に得意げな笑みを湛えた。


地中でチャクラを材木に変化させ、急成長させて牢獄を形成する【木遁・四柱牢の術】。
木材にはチャクラのコーティングが施されているおり、内外を問わず、破壊は困難を極めるという捕縛に適した術だ。


ヤマトを牢内で睨む再不斬の隣で、カカシが迫る様子を、白フード…ナルトは静かに眺めていた。
指がすいっと動く。鍵盤を滑らかに撫でるかのような指先の仕草。
演奏しているようにもとれるその所作は優雅で、美妙な旋律さえ聞こえてきそうだ。

そんなほんの些細な所作に続き、空気を裂くような音がしたが、それはカカシの【雷切】の音で掻き消された。



敵を貫く高速の突き…カカシの一撃必殺【雷切】。
しかし、その術は相手へ触れる寸前に、霧散した。








否、【雷切】の電撃が届く前に、牢獄が崩壊したのだ。


「「な…ッ!!??」」






四柱牢の角材に無数の切れ目が奔る。かと思えば、突如としてスパッと牢獄の柱全てが切り刻まれた。

木片と化した牢獄がバラバラと音を立てて墜ちてゆく。


軽く指先を動かしただけで四柱牢から脱した白フードの隣で、意趣返しとばかりに再不斬が口角を得意げに吊り上げる。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ