第十章
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同点とされた六回のその裏にだった、オリックスの二番手である増井とやからからツーアウトランアーなしの状態に陥ってもヤクルトナイン達は諦めず。
四球と中村のライト前ヒットで一塁二塁となったところでピッチャーは増井から比嘉とやらに交代したが。
バッターボックスに立ったオスナの全身に激しく燃え上がるオーラが宿った、彼は比嘉の投げたボールを見事センター前に打ち返し勝ち越しに成功した。
「またやってくれたな!」
「サンタナに続いてオスナがやってくれたぞ!」
「よく打った!」
「後は抑えてくれ!」
ヤクルトファン達はオスナの最高のタイムリーに色めきだった、ここで石川はマウンドを降り七回は石山、八回は清水昇が好リレーを行いオリックス打線を寄せ付けず。
九回はマクガフが問題なく抑えた、もう彼に第一戦の時の不調は全くなくヤクルトの王手を確かなものにした。
石川は不四十一歳でシリーズの勝利投手となったがこれは何と一九五〇年の若林忠志の四十二歳に次ぐ記録であった、若手も中堅もベテランも誰もが一丸となって全力で戦うヤクルトの姿を象徴する勝利であった。
王手をかけられた中嶋はほぼ無言でグラウンドを後にした、彼の背には勝利に沸き立つヤクルトファン達の歓声が聞こえていた。
そしてオリックス側はまだ言っていた。
「神戸に帰るんだ」
「本拠地の神戸に帰れば勝てるぞ」
「こっちには山本がいることを忘れるな」
「明日勝ったら互角だ」
「山本で絶対に一勝だ」
「どうあがいてもヤクルトの日本一はないんだ」
「日本一は俺達だ」
こう言っていた、王手をかけられてもまだ日本一への妄執を捨てていなかった。だがここで中嶋は昨日以上に奇妙なことをしでかした。
「先発はヤマだ」
「あれっ、オリックスにはヤマって三人いるぞ」
「どのヤマが付く投手なんだ?」
「山崎か山岡か?」
「まさか山本じゃないよな」
多くの者がこの発言にいぶかしんだ。
「流石に山本を明日投げさせないだろ」
「もっと登板間隔開けるだろ」
「だったら山崎か?」
「そうだと思うけれどな」
「はっきり言わなかったな」
「これじゃあ予告先発の意味ないんじゃないか」
マスコミもファン達もこれには戸惑った、ヤクルトファンの中にはこう言う者がいた。
「攪乱するつもりか?」
「先に王手かけられたんでそうするつもりか?」
「何かこすいことするな」
「予告するならすればいいだろ」
「変なことするな」
こう言って首を傾げさせた、このことに戸惑う者が明らかにいた。しかし高津はここでも高津であった。
次の日高津は自身の誕生日を迎え若し明日勝てれば誕生日に日本一の胴上げ監督となる栄誉を受けることになった、だがこうした状況でも全く動じていなかった。にこりともせずナインにこう
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