第二章
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「そのせいよ」
「お母さんのせいじゃないの」
「そう思うわ」
実際に本でそうした話を読んだし母に悲しい思いをさせたくなかった、それでこう言った。だがそれでもだった。
靖奈は痣のことをいつも気にしていた、だから修学旅行等の時は特別に自分だけシャワールームで身体を奇麗にして旅行でもそうした。銭湯等も行かなかった。
そうした暮らしをしていたがある日父が娘に言った。
「その痣何とかなるかも知れないぞ」
「そうなの?」
「ああ、手術を受けてな」
そうしてというのだ。
「取り除けるかも知れない」
「そうなの」
「その手術受けてみるか」
娘に対して問うた。
「そうしてみるか」
「それで痣がなくなるなら」
それならとだ、靖奈は父に希望を見出した顔で答えた。
「お願い」
「こうした時が来るかもしれないと思ってだ」
父は娘の返事を聞いて笑顔で言った。
「手術代は用意しておいたからな」
「だからなの」
「そのことは気にするな、それじゃあな」
「手術受けさせてくれるの」
「まずはそのお医者さんに診てもらってな」
こう話してだった、娘をその医師のところに連れて行った。その医師は若い女性で前原桃花といった。淡い茶色の長い髪の毛で大きな垂れ目で穏やかやな表情の一六〇位の背で胸が白衣の上からでも目立つ女性だった。
桃花は靖奈の痣を見て笑顔で話した。
「手術ですぐに消えますね」
「そうなんですか!?」
「はい、私に任せて下さい」
靖奈に微笑んで答えた、そうしてだった。
実際に手術をした、すると。
靖奈の背中の痣は奇麗になくなった、靖奈は青い痣が消えて真っ白になった自分の背中を鏡で見て言った。
「嘘みたいです」
「いえ、嘘じゃないです」
桃花はその靖奈に笑顔で答えた。
「この通りです」
「痣は消えたんですね」
「そうです」
「あんなに気にしていて誰にも見られたくなかった痣が」
靖奈は涙さえ流して言った。
「奇麗になくなるなんて」
「昔はどうかわかりませんが今は何ともないですよ」
「何ともない?」
「はい、すぐに消えます」
桃花はその靖奈にこの時も笑顔で答えた、とても優しい笑顔だった。
「こうして」
「そうなんですか」
「どんなに気にしていて」
そしてというのだ。
「誰にも見られたくないものでも」
「消えるんですね」
「簡単に。勿論そうでない場合もありますが」
それでもというのだ。
「こうしてです、多くのものはです」
「消えるんですね」
「そうすることが出来るんです」
「そうですか」
「それがどうしても嫌なら」
靖奈にとってはそれが痣だった、そのことを念頭に置いての言葉だった。
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