第二章
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「これはね」
「そうですか」
「このまま山田さんの思うままに描いてもらおう」
「そうすればいいですか」
「若しかしたらね」
原はさらに言った。
「山田さんは将来凄い画家になるかも知れないよ」
「だからですね」
「自由に描いてもらおう、それで白石先生も」
菊江もというのだ。
「どの子もだけれどね」
「山田さんの絵はですね」
「自由に描かせてね」
「何も言わないことですね」
「個性を伸ばそう、それではね」
「はい、何も言いません」
菊江は原に約束した。
「そうします」
「そうしてね」
「わかりました」
菊江は原に確かな声で頷いた、そうして美里に好きに描かせた。美里は絵を描く時間以外にも暇があれば絵を描いていたが。
どの絵も独特だった、それで幼稚園を出る頃にはだった。
美里の絵は明らかに独特な方向に成長していった、そして小学校に入り成長する中でも描いていってだった。
美大に合格してだった。
「今ではですね」
「世界的な画家になってるね」
原は定年してから別の職に就いていたが結婚して今はその保育園の園長をしている菊江に笑顔で答えた。
「そうなったね」
「凄いですね」
「あの時先生が発見してくれたからだよ」
「彼女の才能をですね」
「それでそれを否定しなかったね」
「どの子も個性があるので」
それでとだ、菊江は原に笑顔で答えた。もうあの時から二十年近く経ち結婚して子供も出来たが若い頃の顔立ちのままである。
「そうしましたが」
「そのお陰でね」
「山田さんは今では世界的な画家ですね」
「そうなったよ、幼い頃に見付けた才能はね」
「潰さないことですね」
「伸ばすことだよ」
こう菊江に話した。
「何があってもね」
「それが大事ですね」
「そうだよ、では今もだね」
「それぞれの子にそうしています」
「ならこれからもね」
「そうしていきます」
原に笑顔で答えてだった、そうして。
菊江は子供達の才能を伸ばしつつそのうえで美里の活躍を見た、美里はその才能を遺憾なく発揮して素晴らしい絵を描き続けた。伸び伸びと描かれているその絵には幼い頃から成長している止められなかった才能が確かにあった。
違う絵を描く子供 完
2021・12・21
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