役立たず
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? 別に、行く義理もないじゃん」
「俺がお前を清香ちゃんがいる場所に残すと思う?」
ハルトは低い声で、ルビーの指輪を見せつけた。すでに腰には銀のベルトを備えており、いつでもウィザードに変身できると見せつけていた。
「……全く、信用ないね」
「あのことを、忘れたとは言わせない」
その言葉に、ソラは「へえ?」と鼻息を漏らす。
「ああ、あれ? よく覚えてるね、そんな昔のこと。君自身には関係ないのに……それとも、事件一つ一つに執着するのも、贖罪のつもり?」
「……」
「まあいいや」
ソラはハルトを突き飛ばす。
「今回の事件、僕は手を引くよ。怪物だなんて、とんでもないから。それじゃあハルト君、またね」
手を振ったソラは、玄関ではなく、病室の窓を開ける。
迷いなくそこからジャンプしたソラは、見滝原の屋根伝いにどこかへ飛び去って行った。
「ハルトさん。行こう」
そう言って先に出ていった響に続いて、ハルトと響も外へ出る。
だが、ドアのところで足を止め、こちらを見送る清香へ振り向いた。
「清香ちゃん、気にしないで」
「……?」
「コヒメちゃんは、俺が……俺たちが取り戻すから」
「松菜さん……」
清香はハルトの言葉に、シーツをぎゅっと握った。
「わたし……結局……」
「どうしたの?」
「結局私は、役立たずのままです……」
ハルトの質問に、清香は顔をそむけた。窓側を向く彼女は、果たして外の景色を見ているのだろうか。
「わたしは、今でも、戦うことが怖い……そのせいで、コヒメちゃんも守れなかった……結局私、何の役にも……」
「そんなことないよ」
清香の言葉を、ハルトは遮った。
「トレギアには負けたけど、少なくとも清香ちゃんがいたから、俺たちはコヒメちゃんのことを知ることが出来た。もし清香ちゃんがいなかったら、俺たちがコヒメちゃんの身に起こったことに気付くことだって遅れていた。大体、トレギアはメチャメチャ強い。それなのに、そんなにボロボロになるまでコヒメちゃんを守ってくれたんでしょ? だから、絶対に役立たずなんかじゃないよ」
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