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レーヴァティン
第二百三十二話 北の端までその六

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「兵は生きられない、武具がないとだ」
「戦えないですね」
「もっと言えば兵がなければ戦にもなりません」
「到底」
「一人で飯も武具もなくだ」
 そうであればというのだ。
「戦なぞ出来るか」
「出来る筈もなく」
「戦以前の問題です」
「そうなれば」
「だからだ」 
 戦はそうしたものだからだというのだ。
「蕭何は常にそうしたものを軍に送ってだ」
「戦える様にしていた」
「劉邦がどれだけ敗れようとも」
「それ故にですね」
「最も功がありますね」
「劉邦は項羽に負け続けたが」
 中には五十六万の軍勢で三万の項羽が率いる軍勢の急襲を受けて敗れたこともある、この時のことが一敗地に塗れるの語源となった。
「どれだけ如何に負けてもだ」
「軍勢はあった」
「どれだけ敗れても」
「そうだったのですね」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「最後はな」
「勝った」
「項羽に」
「そうでしたか」
「そして今俺はその蕭何になっている」
 今の自分はというのだ。
「まさにな」
「左様ですか」
「ではですね」
「これからも」
「ここにいる、蕭何も戦っていた」
 戦場に出てはいなかったがというのだ。
「それも最大の功労者だった」
「それ故にですね」
「上様もここにおられ」
「そうして戦われますね」
「兵やものを戦の場に送り」
「そして後ろを万全に治める」
 戦場のそこをというのだ。
「幾ら軍が強かろうとも後ろが揺れていて戦えるか、後ろは足下でもある」
「足下が揺れていますと」
「やはり満足に戦えません」
「どうしても」
「それは無理です」
 幕臣達も答えた。
「やはり後ろがしっかりしてこそです」
「軍を動かせますし戦えます」
「それでこそです」
「そうだな、だから今は治める」
 その後ろをというのだ。
「蕭何の様にな」
「上様は蕭何にもなられる」
「ただ戦の将になられるだけでなく」
「幕府の将軍として」
「そうもなられますね」
「そうしてだ」 
 そのうえでというのだ。
「戦う、では引き続きここから戦を見て動く時は動く」
「左様ですね」
「その様に為されますね」
「これからも」
「そうしていく」
 英雄の言葉には揺らぎないものがあった、そうしてだった。
 彼は会津にいたままそこから戦全体を見て兵やものを送り政を収め戦をしていった。そしてその中で。
 幕臣達から仲間達の武勲を聞いた、そしてこう言った。
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