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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第二章:空に手を伸ばすこと その参
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でいた者達が急に仲間となってしまうのだから無理はなかろう。

「桂花、これは私が決めたことよ。なによりあなたにとっても仕える駒が増えるのは悪いことではないでしょう?」
「それは確かにそうですが・・・」
「ならば納得しなさい。憎悪と嫌悪感に捉われては軍師としての理性を失ってしなうわ。私がそれを許すと思って?」
「・・・いえ、決して許さないでしょう。出過ぎたことを申し上げました。お許しください」

 曹操に諌められて荀ケが頭を下げて許しを請う。曹操はそれに、うむ、と応えて面を上げさせた。荀ケが頭を上げるとこちらを恨み骨髄に徹す如き仇であるかのように睨みつけていた。内心ではあらん限りの罵詈罵倒を述べて呪詛を送っているのだろう。正直こちらはその恐ろしい歓迎を喜ばしく受け取ることはできない。
 若干顔をひくつかせながら仁ノ助は曹操に応える。

「・・・非力な身ではありますが、連れ共々謹んで参軍させていただきます」
「それでいいわ。天下に覇道を敷く軍に加えられたことを光栄に思いなさい」

曹操が彼の言葉に満足そうに頷く。

(人物マニアであることも史実通りとは、難儀しそうだな)

 目を閉じて礼をする彼の内心を露知らず、曹操は思い出したかのように言葉を続ける。

「そういえばまだ名前を聞いていなかったわね。あなた、名は?」
「こちらに伏せる者は錘琳と申し、真名を詩花と申します。私は辰野仁ノ助と申します。・・・・・・真名はございません」

 曹操を初め四人は彼の名に不思議なものを見るような表情をし、次いで真名を持っていない事実に驚く。真名は例え皇帝であっても神聖にして不可侵なくらい重要なものであり、これを人に預けることは魂を預けることも同意義である。それを持たぬ仁ノ助はその名前もそうであるがこの世界では非常に珍しい者である。
 騎兵隊を指揮していた女性が目を怒らせて仁ノ助に問い質した。

「貴様ぁああ!!華琳さまに預ける名がないとはどういうつもりだああああ!!!!」
「落ち着け姉者。態々剣で斬るようなことではないだろう」

 大剣の柄を掴んでこちらに詰め寄ろうとする女性を隣に立つ女性が冷静な声で諌め、詰め寄りを止めようと後ろから抑える。曹操はそれに慣れているのかそれには目もやっていない。
 仁ノ助は目の前で突如怒る女性に無視を決め込んで言葉を続ける。

「・・・ですので、私を呼ぶ時は『仁』とお呼び下さいませ」
「・・・・・・真名を持たないならば仕方ないわね。ここは妥協してあげます。だけど貴方の事は仁ではなく、仁ノ助と呼ぶわ」

 真名の代わりに名を一字だけで呼ぶように求めた彼の提案を、曹操はあくまでも己のルールを通して受け入れた。受け入れを聞いて、黒髪の女性は怒り出すのを止め、ゆっくりと再び主の隣に立つ。
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