第二章:空に手を伸ばすこと その参
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く深呼吸をして心の整理をする。この中に曹操孟徳、乱世の梟雄が自分達を待ち受けているかと思うと緊張で胸がいっぱいだ。詩花はどうやって緊張を解しているのだろう。気になった彼は彼女の方を見遣った。彼女は掌に何度も文字を指で記しては、それを飲み込む行為をしていた。掌に書かれているの『人』なのであろうか。乱時の時にでも凛とした表情で一心不乱に『人』の字を掌に書く姿は、見ているだけで可笑しいものがあり、思わずくくっと笑い出してしまう。そんな彼を非難するように詩花が睨んでくるが、それでも緊張するのか今度は顔の緊張を手で解し始めた。彼女の微笑ましい行動を見ていると自分の緊張が和らいでいく。
意識してかしないでか行われる彼女の行動に「ありがとう」と感謝の意を告げると、彼女は意味が分からないという風に視線を向けてきた。それに一瞬笑みを零すと、顔つきを真剣にして本陣の幕を見つめる。彼は意を決したのか、本陣の中へ入っていくために足を動かし始める。
そして幕に手をかけて、ついに中へと入っていった。
第二章:空に手を伸ばすこと その参
「よく来たわね。私が曹孟徳、この大陸に覇を唱える者よ」
「「・・・・・・・・・」」
(えっ、なにこれ。女・・・・・・・・だと?)
自らを曹操と名乗った少女に対して仁ノ助の脳は軽いオーバーヒートを起こしていた。あの大軍人・大政治家・詩人でもある曹操は史実では列記たる男だったはずだ。その彼が、この世界では神様が薬でもキメてとち狂ったのか、女性となっているとは。いかに現実への適応が早い人間あってもこれ絶対に予想し得ないことだ。史実の彼の評価など彼女の容姿を見た瞬間に脳から剥がれて、驚いたまま開けられている口から宙へ毀れだしてしまった。
金色の髪を二つに分かつように髑髏を象った髪飾りがつけられ、分かたれた髪の毛は何故か器用なドリルを描いて垂れている。凛々しく覇者の表情をたたえている顔は気品と自信に満ち溢れており、彼女のきりっとした瞳を美しく見せている。全体的に深い蒼に染まった服を着装しており、彼女をより威圧的に見せるのに十分働いている。同時に胸元が若干開けられた作りとなっており、そこから僅かに胸の谷間が見えて彼女の倒錯的な色気を見事に出している。胸の上をコルセットのように巻いた縁が金色をしている紫の帯は、彼女がもつ知性と理性をさらに高めている。紫色をしたスカートから健康な色をした肌が見えており、白のハイソックスのようなものを履いて鉄の具足を締めた彼女の足は組まれている。自らの偉大さをさらに高めるかのようなポーズは、正に彼女の威風堂々たる容姿にぴったりの代物であった。
改めていうが、彼が想像した曹操とは力と野望に満ちた若い青年である。自分の予想が大きく外れた彼は驚きの余り彼女の言葉に答える
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