第二章
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「いいわね」
「そうしないと駄目なんだ」
「あと私は絶対に貴方の前に出ないから」
「並んで歩くんだ」
「そうするか少し後ろにいるわ」
「前にいてもいいのに」
「奥さんはそうするなって言われたの」
黒髪を短くしていてひょろ長く丸い目の彼に告げた。
「お母さんに」
「そうなんだ」
「そう、だからね」
「薫ちゃんは僕の前に出ないんだ」
「家事も私がするって言ったらしないで」
こうも言うのだった。
「言ったわね、何でもよ」
「僕は薫ちゃんの言うこと聞かないと駄目なんだ」
「だからよ、私がそう言ったら」
その時はというのだ。
「いいわね」
「絶対に」
「そうよ、しないで」
家事をというのだ。
「それでお勉強もスポーツもね」
「しないと駄目なんだ」
「私が言ってるからよ」
「お父さんもお母さんもそう言わないけれど」
「奥さんが言ってるのよ」
即ち自分がというのだ。
「だったらいいわね」
「絶対になんだ」
「そうよ、お勉強もスポーツも」
「古武術も」
「私が言ってるからよ」
両親が言わずともというのだ。
「いいわね」
「それじゃあ」
「お勉強が出来てスポーツも出来て強くてこそ」
薫はこれまた強い声で話した。
「私の旦那様よ」
「だからなんだ」
「そうよ」
「何でも出来ないと駄目なんだ」
「いいわね」
「言うこと聞かなかったらどうなるの?」
篤は薫にその場合を問うた。
「一体」
「怒るから」
そうするというのだ。
「だからいいわね」
「怒られなくなかったら」
「そう、私の言うことを聞きなさい」
小学校に入った時からこうだった、通っている小学校も同じになり中学校そして高校もそうであり。
大学でもそうであってだった。
篤の隣にはいつも薫がいた、篤の隣にはいつも薫がいてだった。
彼のことを全て取り仕切っていた、篤は黒髪を奇麗にセットした長身で中世的な顔立ちの青年になっていて。
薫は一五〇位の背で黒髪を少女の頃のままのおかっぱにしていて切れ長の長い睫毛の目を持つ色白で楚々とした外見になっていたが。
性格は変わっておらずいつも薫に言っていた。
「今日は帰ったらよ」
「道場でだね」
「古武術の稽古をして」
そしてというのだ。
「今日の復習とね」
「明日の予習だね」
「そうよ、いいわね」
「それじゃあね」
「私も一緒だから」
稽古も学業もというのだ。
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