第一章
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困った許嫁
国木田篤の許嫁は足利薫という、親同士が決めた許嫁で二人がはじめて会ったのはお互いが小学校に入った時だ。
その時にだ、まだ子供の薫は篤に言った。二人共同じ歳だった。
「私が貴方の奥さんになるから言うこと聞きなさい」
「えっ、そうなるんだ」
「当然よ、旦那様は奥さんの言うことを聞くものよ」
黒いおかっぱ頭のあどけない顔で指差して告げてきた。
「だからよ」
「そうなるんだ」
「だから今からよ」
薫はさらに言った。
「貴方は私の言うことは絶対に聞きなさい、いいわね」
「何でもって僕奴隷じゃないよ」
「奴隷じゃないわよ」
薫もそれはと返した。
「旦那様よ」
「そうなるのかな」
「家のことは奥さんに従うものだ」
ここで篤の父が言ってきた。
「だから薫さんの言う通りだぞ」
「えっ、そうなの」
「ましてお前は将来忙しいんだ」
父は息子にこうも言った。
「国木田家の仕事をするんだからな」
「うちは何かとやっているでしょ」
母も言った、篤の家は広島のかつては大地主で地方財閥だった。今も地元ではかなり大きな家で事業も幅広く行っている。
その家の者としてとだ、彼は言った。
「だからよ」
「僕も大人になったら」
「そう、忙しくなるからよ」
だからだというのだ。
「いいわね」
「薫ちゃんの言うこと聞かないと駄目なんだ」
「ええ、お家のことはね」
「そうなんだ」
「だからだ」
また父が言ってきた。
「薫さんの言うことを聞くんだ」
「今から?」
「そうだ、将来結婚するなら同じだ」
結婚していると、というのだ。
「だからな」
「言うこと聞かないと駄目なんだ」
「ああ、いいな」
「お義父さんとお義母さんが言われてるでしょ」
ここでまた薫が言ってきた。
「だったらよ」
「今からなんだ」
「私の言うこと聞きなさい、何でもね」
「そうなんだ」
「そうよ、何でもね」
こう言ってだった。
薫は篤にあれこれと言うことになった、それは勉強しろスポーツをしろ行儀よくしろと親以上に厳しく。
薫がしている古武術の道場にも通わさせられてだった。
元々喧嘩の弱い篤は薫にしょっちゅう投げ飛ばされた、しかし帰りに荷物を持つ時や掃除の時等はだった。
薫は篤にいつも言った。
「夫婦は助け合ってだからね」
「二人で半分こずつなんだ」
「そう、持つものよ」
こう言って実際にそうするのだった。
「誰かが一方的に持つなんてね」
「しないんだ」
「お掃除もよ」
こちらもというのだ。
「同じよ」
「一緒になんだ」
「お料理もよ。けれど旦那様は外でお仕事をするから」
「大人になったら」
「その時はお家のことは任せなさい
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