第四章
[8]前話
「夜空を見ながらお酒を楽しむのも風流ですね」
「そ、そうですね」
池端は内心の失敗を感じながら応えた。
「それは」
「はい、それではです」
「これからですか」
「さらに飲みましょう、そして食べて」
「星空を見て」
「そうして楽しみましょう」
「わかりました」
池端は内心項垂れながら応えた、そして二人で飲んで食べて八条に紳士的に送ってもらった。その後で。
池端は伊東に一部始終を話した、そうしてこう言った。
「星空だったことが」
「いえ、月夜でもよ」
伊東は池端に笑って応えた。
「彼はそうですね、でね」
「終わりですか」
「そうした人なのよ」
八条、彼はというのだ。
「言ったわね、自分をもてないと思い込んでいるから」
「だからですね」
「漱石のこの言葉は知っていると思うけれど」
それでもというのだ。
「けれどね」
「自分が言われるとはですね」
「全く思っていないのよ」
「それも確信されて」
「そうよ」
まさにというのだ。
「だからね」
「どちらにしてもですか」
月夜でもとだ、池端は項垂れて応えた。
「失敗していましたか」
「そうだったわ」
「やっぱり無理でしたか」
「それでもう一度チャレンジするかしら」
「いえ、脈も感じませんでした」
池端は告白した時に感じ取った、このことを。
「ですから」
「それでなのね」
「もうです」
いいというのだった。
「あの人とは」
「もうなのね」
「知り合い、お友達になれれば嬉しいですが」
「恋愛感情は抱かないのね」
「それはなくなりました、また別の人にです」
伊東に笑顔で話した。
「言ってみます」
「月が奇麗ですねと」
「そうします」
笑顔のまま言った、そうしてだった。
池端は八条との恋愛を過去のものにした、そして別の人と知り合って幸せになった。この時この言葉を出したのかは言葉を出した彼女と相談を受けてきた伊東それに相手の彼だけが知ることだった。
月よ永遠に 完
2021・6・14
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