雪山編 新たな伝説を築く男達
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――雪山深奥、と呼ばれる場所がある。フラヒヤ山脈の奥深くに存在し、数百年に渡り氷雪によって封じられていた未開の秘境。
その禁忌の地に足を踏み入れ、猛吹雪の果てに待つ「神」に挑まんとする2人の男が居た。伝説の存在すら恐れぬその猛者達は、悠久の沈黙を破らんとする「竜」の討伐に赴いているのである。
「……引き返すなら、今しかないぞ。ここで引き下がっても、お前を笑う者など1人もいない。それだけは俺が保証する」
「あはは……君がそんなセリフを僕に言う日が来るなんて、昔は想像したこともなかったよ」
ポッケ村の命運を賭けたその戦いに臨まんとする彼らは、迷いなく荒れ狂う吹雪の只中を歩んでいた。「G級」という超越者の域に踏み込んで久しい男達は、禁断の道を進んでいるのにも拘らず、穏やかな声色で言葉を交わしている。
真飛竜刀【双獄炎】とブリュンヒルデの2本を背負い、シルバーソルZシリーズの防具で全身を固める、「伝説世代」の一角――ディノ・クリード。
カムラの里の未来を賭けた激闘から、6年を経た今。「砂獅子」ことドドブランゴ亜種を打ち破り、生ける伝説達の中でも最強と噂されているその男と、肩を並べているもう1人の青年は。全てを白く染め上げる猛吹雪の中を、平然と闊歩していた。
「ここまで来てそんな風に笑っていられるとは、お前も随分と大物になったものだな」
「出会ってからずっと、誰かさんには散々鍛えられてきたからね」
「……ふん。言うようになったな、ヤツマ」
グルンリヒトフラップを背に、ミヅハ真シリーズを纏う「伝説世代」の1人――ヤツマ。かつては同期達の中で最も臆病者であると蔑まれ、落ちこぼれのように扱われていた彼は今、最強格とされるディノと対等の立場に立っていた。
真逆の立ち位置に居た頃からの付き合いであり、互いに気心の知れた仲であるからこそ。2人は今、足並みを揃えてこのクエストに臨んでいるのだ。
「……僕は嬉しいんだよ、ディノ。あれほど孤高で、誰にも頼ろうとしなかった君が、やっと誰かに助けを求められるようになったんだなって。そして……その頼る相手が、僕なんだってさ」
「……勘違いするな。お前より頼れる奴など他にいくらでも居る。たまたま近くに居た同期がお前だったというだけのことだ。他の連中がこの近辺に居れば、奴らに声を掛けていたさ」
「クリスも居たのにかい?」
「……」
このフラヒヤ山脈の近くには、大貴族であるゼークト家の領土がある。そのゼークト家の出身にして、ディノ達と同じ「伝説世代」の1人でもあるクリスティアーネ・ゼークトは現在、実家に帰省しているはずであった。
ヤツマの他にも、貴重な戦力になり得る人材は居た。しかしそれでもディノは、彼女に声を掛けようとはしなかったのである。
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