雪山編 新たな伝説を築く男達
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年下で背も低かったアダイトの影に隠れ、ディノに怯えていた彼の少年時代はもはや、思い出すのも難しいほどの「過去」となっていた。
「……確かに、お前は変わったな。大公殿下に……アダイトの後ろに隠れて、俺に怯えていた頃のお前の姿すら、もう思い出せそうにない」
「思い出せないのは、僕もだよ。自分が強くなることにしか頭になかった君は、もういない。現に今、君は僕を連れている」
「……」
「誓ってもいい。これからも変わって行くよ、君は。そのうち、女の子とかにも興味を持つようになったりさ。……だから必ず勝って、生きて帰ろう。僕は、そのためにここに来たんだ」
やがて、そんな2人の語らいを断ち切るように。氷雪の大地を裂き、山を突き崩さんとする咆哮を上げ――「崩竜」ウカムルバスが彼らの前に出現する。
その白き巨躯を仰ぎ、得物を構える2人の目には、「絶望」の色など微塵もない。あるのはただ、この先の未来を得んとする「希望」の色のみであった。
「……ふん。この俺が、色事に現を抜かすようになると? そこだけは承服しかねるなッ!」
そして。是が非でもクリスティアーネを守ろうとしている自分の本心にも気付かぬまま、兜の下で不敵な笑みを零しているディノが、真飛竜刀を振り翳した瞬間。
この雪山深奥と呼ばれる秘境の地に、新たなる「伝説」が刻まれるのだった――。
◇
その戦いから、数日後。事の顛末を知ったクリスティアーネに、2人がこってりと絞られたのは言うまでもない。
怒りながら大粒の涙を溢す彼女の姿に、ディノは普段の毅然さを失い慌てふためいていたのだという。例え竜をも穿つ武力を得ようとも、愛する女の涙に勝てる男など、この世にはいないのだから。
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