雪山編 新たな伝説を築く男達
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の各地から名声を集めても。誰もが何気なくこなしていることだけが、どうしても出来ずにいた。その後ろめたさ故に、6年が過ぎた今も、ディノは同期達との距離を詰め切れずにいる。
そんな彼の葛藤を僅かな所作から察していたヤツマは、切なげにその横顔を一瞥した後。これまでの旅路の中で耳にしてきた同期達の「伝説」を振り返り、白い空を仰いでいた。
クリスティアーネ、ディノ、ヤツマ、そしてアダイトの4人が1年前、「覇竜」アカムトルムを討ち果たした時のように。「伝説世代」と呼ばれる狩人達は、それぞれの逸話を各地に残しているのだ。
「峯山龍」ジエン・モーランに遭遇した砂上船を救い、その巨大な双角を叩き折ったというウツシ、エルネア・フェルドー、レイン・ファインドール、カツユキ・ヒラガ。
幾つもの港町を津波に沈めた大地震の実態を突き止め、「大海龍」ナバルデウスを討伐したとされる、アテンス・センテラ、シン・オーマ、ディリス・ハルパニア、ユナ。
千剣山での調査中に「蛇王龍」ダラ・アマデュラの襲撃を受け、死闘の果てに返り討ちにしたというドラコ・ラスター、ゴウ、カエデ。
ドンドルマ近郊に出現した「巨戟龍」ゴグマジオスを撃退し、街中にその雷名を轟かせたというアカシ・カイト、レマ・トール、ミナシノ・ヤクモ。
村も町も飲み込み、老若男女問わず数多の命を喰らい尽くしてきた「骸龍」オストガロアを倒し、その犠牲となった者達の魂に報いたというビオ、カノン・アルグリーズ、ベレッタ・ナインツ、ノーラ。
遺群嶺に踏み込んだ龍歴院の調査隊が「天彗龍」バルファルクを発見した際、彼らを守りながらそのスピードと渡り合っていたというカグヤ、レノ・フロイト、ナディア・ゴーシュ。
そして、新大陸に出現した「地啼龍」アン・イシュワルダの脅威から、現地の調査団員達を守り抜いたと伝えられているイスミ、ディード、フィオドーラ、ムスケル・マソー。
彼らがこの6年間で世界に残してきた「伝説」の数々は、その余りに突飛で人間離れしている内容故に、多くの者が尾鰭の付いた御伽噺だと思っている。
それら全てが一切の脚色がない「事実」だと知っているのは、直にその強さを目の当たりにした一握りの目撃者達と――共に肩を並べてきた、同期達だけであった。
「……皆、変わって行ったよ。僕も、少しは変われた。君だけが変われないままだなんてことはない。もしそう思ってるのなら、それはまだその時が来ていないだけだ」
「ヤツマ……」
これまでの6年間で、同期達はそれぞれの伝説を世界各地に築き上げ、「伝説世代」という名の由来となっている。その輪の中には必ず君もいるのだと、ヤツマは静かに訴えていた。
そんな彼の姿には、もう臆病だった頃の面影など一欠片も残っていない。自分より
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