雪山編 新たな伝説を築く男達
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元を辿れば、ディノ自身もアダイト・クロスターと同じく、生家と本来の名を捨てハンターになった身であった。
ユベルブ公国における武の名門、クラウディス伯爵家の長男――グランディーノ・クラウディス。それが、ディノの正体である。
そんな身の上の彼としては、生家の名と誇りを背負いゼークト家を継がんとしているクリスティアーネの身に、万一のことがあってはならないという考えがあるのだ。
彼女が「覇竜」アカムトルムの討伐に立ち上がった際は、断じて死なせまいと柄にもなく真っ先に参加を申し出た。だが、今回クエストを受注しているのは自分。
そこに彼女を参加させて、もし何かあれば。クラウディス家の武人としてもディノ・クリードとしても、彼は己を許せなくなる。
今回のクエストは、確かに自分独りでは苦しい。だが、クリスティアーネだけは巻き込みたくない。
数少ない「親しい間柄」である者達も、翡葉の砦の戦いから6年が過ぎた今となっては、容易く頼れる「立場」ではなくなっていた。
最も付き合いが深かったアダイト・クロスターことアダルバート・ユベルブは現在、ユベルブ公国の大公という地位に就いている。当然ながらクラウディス家の血を引く武人としては、公国の君主たる彼を死地に引き摺り込むことなど出来るはずもない。
かつてはカムラの里を救うために共闘したウツシも、現在は次なる百竜夜行の脅威に備えるべく、「愛弟子」の育成に勤しんでいると聞く。「怨虎竜」マガイマガドの懸念もある以上、今の彼を里から引き離すわけにはいかない。
馬が合わず何度も喧嘩していたが、それなりに交流も多かったドラコ・ラスターは、故郷の村で幼馴染の美女と結婚したばかりだという。新たな家族と愛を育まんとしている時に、水を差すのは忍びない。
そんな彼の前に偶然現れたのが、偶然にもポッケ村に立ち寄っていたヤツマだったのである。
「……俺はお前達とは違う。『伝説世代』などと持て囃されようが、どこまで行っても結局俺は、戦うことでしか己の価値を証明出来ん男だ。そういう奴にしかなれんというならば、そういう奴なりの命の使い方というものがある。それだけのことだ」
「だからクリスには何も知らせず、独りで『奴』を倒すって? もし彼女が後から知ったら、怒るなんてものじゃないよ。一緒に『覇竜』と戦ったこともある仲なのに、今回に限って仲間外れだなんてさ」
「それで構わん。しくじったところで、失われるものなど命知らずの愚者独りだからな」
この6年間、ディノはほとんどのクエストを単独でこなしていた。稀に助力を求められた時は必ず応じていたが、自分から協力を仰いだのは今回が初めてのことであった。
「伝説世代」の1人として幾度となく強大なモンスターを狩り、数多の逸話を残し、大陸
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