第2部
テドン
旅の真意
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妄言に付き合わされて自身を鍛えてきただけで、あいつの……親父の意志を継ぐために魔王を倒したいと思って旅に出たわけじゃない。ただ、自分の力がどの程度の実力なのか、試してみたかっただけだったんだ」
「……そうだったんだ」
頷く言葉とは裏腹に、私は少なからず衝撃を受けていた。
勇者であるユウリがオルテガさんの意志を継いで魔王を倒す旅に出た、というのが世間一般の常識であったし、私もそう思っていた。けど実際は、そんな理由でユウリが旅に出たなんて、誰が想像していただろうか。
けれど確かに一緒にいて、違和感を感じることは時々あった。自分が勇者だとこだわるわりには、英雄であるお父さんの話を一切しない。英雄の息子という肩書きを、自ら避けているようにも見えた。
「だが世界には、俺より強い奴なんていくらでもいるし、そんな奴らでも魔王を倒すどころか、城にたどり着くことさえできない。このまま俺は、旅を続けていいのだろうか」
彼がこんな弱気な姿を見せるのは、初めてだった。全てが完璧で、魔王を倒すことにも絶対の自信を持っていたあの勇者が、カリーナさんの話を聞いて自分の信念に疑いを持ち始めている。そんな私が思い描いていた勇者とは程遠い発言をする彼に、私は何も言えずにいた。
でも、今隣にいるのは私の理想の勇者ではない。アリアハンから一緒に旅をしてきた、ユウリだ。
「他の人のレベルなんて関係ない。ユウリはユウリだよ」
「……!?」
「きっかけはどうであれ、私はユウリとならきっと魔王を倒せるって信じてる」
でも、と私は一呼吸置く。
「それでも、もしみんなの期待に応えるのが辛かったり迷ったりしたら、今みたいに弱音を吐いて欲しい。私だけじゃない、きっとナギやシーラも聞いてくれるよ」
ユウリだって一人の人間だ。私たちと同じように迷うことだってある。そういうときだからこそ、仲間という存在は必要なんだと思う。
「それに私も、今のままじゃユウリの足手まといにしかならないし、心配かけさせないくらい頑張って強くなるよ。だから、皆で一緒に魔王を倒そう」
「……」
しまった。ついでしゃばったことを言いすぎてしまった。
現に、「何言ってんだこいつ」といわんばかりにじっと睨み付けてきてるではないか。
するとユウリは、不機嫌な顔のまま私の右頬をつねってきた。うう、やっぱり怒ってる。
「いははは!!」
「そういう台詞はもっとレベルを上げてから言え」
ぱっと手を離すと、痛くて涙目になっている私を見て、薄く笑った。
「確かに、いくら動機が不純でも、魔王を倒すと言った以上、成し遂げなければならないな。俺はまだ、覚悟が足りなかったのかもしれない」
そう言って、ユウリはこちらを見つめ返した。
「お前のお陰で目が覚めた。ありがとうな」
あれ? もしかしてそんな
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